3話 その1
魔物が出た次の日の放課後。第二生徒会室には、綾香と紫苑、フクジュしかいなかった。
「今日は少ないな」
のんびりとソファに身体をあずけたままフクジュが言った。
「海咲と藤乃は休みで、楓は早退。水樹は藤乃が心配だから帰るって連絡もらってるが。
ほんとに今日は人が少ない」
ぼやくフクジュに紫苑が言う。
「どうせ何かしてるわけじゃないですしたまにはいいんじゃないですか?
というか会長が生徒会の仕事してるの見たことないんですが」
「生徒会の仕事なら上にいる時にさっさと終わらせてるさ。雑務だし面倒だがな。
まああとは前に出るようなことくらいだし毎日やることなんてないさ」
一応は生徒の顔である生徒会長はだらけきっている。
「会長ってここにいるときいつもこうですけどちゃんと仕事してたんですね」
「まあ一応それくらいはな。内申点稼ぎになるし表向き真面目系で通してるからな」
「そういうの考えてたんですね」
「せっかくなったんだし利用できるものは利用するさ」
フクジュと紫苑が会話をしている間、綾香は何もすることがないようにぼーっとしていた。
「そういえば綾香、昨日のことだけど」
フクジュが急に話題をふった。
「なんですか?」
そう答えた綾香だったが、次に来る言葉はだいたい予想が出来た。
「結晶、だっけ?あれって結局どういう物なんだ?」
フクジュからは予想通りの質問が来た。
「だから昨日も言いましたけど私はよく知りません。
教えて貰ったのも使い方くらいですし」
「気になるし訊きたいのだけど、今日は海咲休みなんだよな」
「はい、昨日の雨でだいぶ濡れちゃって体が冷えて体調崩したって言ってました」
「へえ、海咲でも風邪ひくんだな」
「どういう意味です?それ」
綾香が怪訝そうに訊いた。
「なんか、風邪とか体調不良なんて縁がなさそうなイメージ持ってたからさ」
「まあ確かにパッと見そう見えるかもしれませんけどね。
でも海咲、結構身体弱い方なんですよね・・・」
綾香は心配そうにため息をついた。