95 奴隷にされたくない!
振り返ったンドペキの目に映ったものは、その声の主であろう老女に突進していくひとりのパリサイド。
「おい! やめろ!」
部屋の中は騒然となった。
「いやだ! 私は行かない!」
浮足立った人々がパリサイドから逃れようとしている。
スジーウォンや数人の隊員が、押し合う人々を掻き分けて女の元へ向かおうとしている。
「やめろ! いやだ!」
女はなおも叫んでいた。
「奴隷にされたくない!」
ンドペキもその女の元へ行こうとしたが、数歩も行かないうちに、女の声は消えた。
パリサイドが放ったフィルムに瞬時に巻き取られ、あっという間に抱えられてしまった。
数人の市民、それに東部方面攻撃隊の隊員が追いすがる。
しかし次々に現れたパリサイドに一蹴され、フォルムにぐるぐる巻きにされた老婆は連れ去られた。
「おい! 待て!」
「なにをする!」
ンドペキはパリサイドを追って部屋を出たが、もうそこには誰もいなかった。
「なんだ! これは!」
部屋では、サワンドーレに詰め寄る人々がいた。
「説明しろ!」
「どういうつもりだ!」
「これがお前たちのやり方か!」
「俺達をなんだと思っている!」
しかし、サワンドーレ自身が驚いているようで、まともに返事もできないようだった。
「サワンドーレ!」
レイチェルの声が響いた。
「サワンドーレ! よく聞きなさい! あなたが答えられないのであれば、答えられる人に伝えなさい!」
レイチェルの声に、人々の声が静まっていく。
「こういう行動しかできないパリサイドを、私達にこういう扱いをするパリサイドを、今後、友人だとは思わない! 明快、かつ私たちが納得できる説明がない限り、あなた方に従うことはない!」
サワンドーレが、大きく息を吐いた。
そして、額に手をやると、瞳を閉じた。
「レイチェル……」
「なんです! あなたに説明できることがあるのですか!」
「レイチェル長官。私自身、驚いています。こんなことが起きるなんて……」
そしてサワンドーレは、人々に席につくように身振りで示した。
「皆さん、落ち着きましょう。お願いです。どうか……」




