94 走ることさえままらない
ンドペキとスゥが、隊員と共に前方を駆けていく。
イコマは、ユウとその後を急いだ。
チョットマはンドペキと一緒に先頭を行きたがったが、スジーウォンが思い留まらせている。
さらに後方、スジーウォンとチョットマ、スミソ、そしてレイチェルが追ってくる。
歩みはゆっくり。
もちろんチョットマの身を案じて。
街並みはいつも通り、宇宙船の中とは思えない少々くたびれた風情を見せ、通りを行く人々もどことなくのんびり歩いている。
人らしい顔を持ち服を着ている者もいるが、パリサイドの身体の者が多く、黒い裸体を見せて悠然と歩いている。
イコマも彼らと同様、一糸纏わぬ姿。
恥ずかしいという気持ちは薄くなってきたとはいえ、まだ腰の辺りが心もとない。
それにまだ、飛ぶことはおろか、走ることさえままらない。
ンドペキ達の姿はもう見えなくなった。
早くアヤの元へ、と気持ちは焦るが、他のパリサイド同様、のんびり歩くしかなかった。
結局、アヤが自分の名を覚えているのか、という問いには応えてもらえずじまい。
アヤがどんな目的で街を歩いていたのかも。
アヤの言う、自分の住まいとは。
そして、行方知れずになってから、どうしていたのかも。
チョットマ達が追いついてきた。
チョットマが一団の先頭を行く。
もうすっかり元気だよ、という足取りで。
ウイルスに打ち勝ったのだ。
彼女の気力と意志力がウイルスにまさったのか、それとも彼女の肉体的特徴がウイルスを跳ね返したのか。
それはわからないが、様子を見る限り不安な要素はない。




