93 うろちょろされたら困るんじゃない?
部屋の中に、アナウンスが流れた。
「こちら、キャプテン、キョー・マチボリー!」
「ほう!」
「乗船者の皆さんに、緊急の連絡があります!」
「確かに、ここは宇宙船の中だ」
船長直々のアナウンスは、船内の隅々にまで流れる仕組みだが、実際に聞くのは初めてのこと。
「当船スミヨシは、一月五日深夜にパリサイド星の軌道に接近予定!」
レイチェルが聞いてきたとおりだ。
続けて、
「一月七日未明には、着陸準備開始の予定! 残り少ない宙の旅ですが、存分にお楽しみください!」
と、朗らかすぎる声が流れてくる。
「では、今後のことについて、アイーナ議長からメッセージがあります!」
キョー・マチボリーに代わって、アイーナのハスキーな声が流れてきた。
ンドペキは巨大な丸いクッションを思い浮かべながら、そのメッセージを聞いた。
簡潔なものだった。
注意事項。
軌道到達に先立つこと二十四時間前を、チェックインタイムとする。
その時刻をもって、一切の市民活動は停止される。
以降は、外出禁止。
チェックインタイムまでに、すべての個人的荷物を所定の場所に持ち込むこと。
その期限、すなわち市民活動の停止時刻、外出禁止発令時刻は、確定次第連絡する。
持ち込まれなかった荷物が、手元に戻ることはない。
また、外出禁止発令後にそれぞれの部屋にいなかった場合、生命の保証はないことを申し添えておく。
地球から避難してきた乗船者には、着陸に向けての各種手配の方法及び手続き、手順について、担当の講師から説明がある。
また、パリサイド到達後の予定については、後日連絡する。
以上。
「荷物って、何もないけどな」
「ある人もいるんじゃない」
「こっちはそれどころじゃないぞ」
「どこから放送してるんだ?」
「外出禁止か」
「そりゃ、船内でうろちょろされたら困るんじゃない?」
そんなことを言い合いながら、五人は立ち上がった。
「さあ、行くか」
まさしく、今日は講義の日。
「行かぬわけにはまいらぬか」
ンドペキは全く気がすすまなかったが、欠席にはペナルティがあるという。
しかも、アイーナのメッセージにあったとおり、今日は特別な講義になるだろう。
「ここで悶々としていても、仕方ないしな」
出席する必要のないユウは、再度アヤの元へ向かうことになり、連れ立って講義のある部屋に向かった。




