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93 記憶を無くしたかもしれない

 暗然とした思いの中で、記憶が甦ってきた。

 また、あの時代に戻るのか……。

 数百年もの間、アヤが記憶を失っていた、あの時代に……。


 たった一人ぼっちで、思い出だけを心の支えにしてアギとして生きてきた、あの永い永い年月に。


 あの頃の苦しみが一気に押し寄せてきて、イコマは涙が滲み出すのを止めようがなかった。


 三人で過ごした日々のなんと短いことか。



 しかし、今はユウがいる。

 ユウなら。

 パリサイドのユウなら。

 ユウなら、なにか手だてを。


 イコマは涙を何とかくい止めると、滲む目をしっかりと見開いた。

 そして聞いた。

「アヤは、自分のことをどう言ってる?」


 そう。

 あの時代、アヤは自分の名さえ忘れて、バードと名乗っていたのだ。


「というと?」

「アヤは、自分はアヤだと?」



「話は途中でも聞ける! 行くぞ!」

 ンドペキが引きちぎるように扉を開けた。


「場所は?」

「バルトアベニュー十七番街!」

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