表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/311

82 可愛いお口が寂しがってる

 教祖が死んだ。

 実際は殺されたんだけどね。

 そこから教団は瓦解していった。

 教団が倒れ、後はろくでもないやつが統治を引き継いでいった。



 首相とか大統領とか名乗るいろんな連中が、入れ代わり立ち代わり、人々をまとめようとした。

 しかし、元々、宗教に狂った連中の寄せ集め。

 神なんてものを信じて、親も子も捨て、恋人も捨て、地球という故郷まで捨ててきた連中なんだよ。


 単に舞い上がっていただけの連中。

 おバカにも、教祖とやらの口車にやすやすとのせられてしまった連中。

 祈りなんて言って、トランス状態の快感に酔ってただけの連中なんだよ。


 その時に少々高い地位にいたとか、金を持っていたとか、腕力があったとか、人当たりが良かったとか、運が良かったとか、口が立ったとか、そんな理由で社会を統べていけるはずがない。


 するとどうなる?

 そう、私達の社会は、たちまち立ち行かなくなったのさ。



 差し迫った危機は飢餓だったね。

 船団のエネルギー備蓄は充分にある。しかし、それをうまく引き出し、コントロールし、有効に使う。

 これができない。

 そのうち、宇宙船も、街も、生産設備も何もかもが老朽化し、経済も文化もすべてが朽ちていった。

 なにもかも、お先真っ暗。


 社会は荒れたさ。

 大勢の市民が飢えに倒れた。

 あるいは殺された。

 あるいは得体のしれない病気が蔓延した。

 袋の鼠みたいに逃げ場のない宇宙船の中で、人々は明日の何をも期待できない年月を送った。


 よくもったものさ。

 百年もの間。



 その間、宇宙船は旅を続けた。

 もちろん、地球に帰るために。



 絶望だけを乗せた旅。

 崩れ落ちようとしている宇宙船に、かつてのような航法はとれない。

 図体が持たないのさ。


 低速安全航行。


 地球に帰れる見込みなんて、ない。

 光の速度で飛んだとしても、千年はかかる距離。

 それを、音速程度で飛ぶんじゃね。

 望郷の念は募れど、口にすることさえ憚られる、そんな状態だった。



 ほらほら、可愛いお口が寂しがってるよ。

 そうだ。

 アイスクリームを出してあげよう。とっておきのがあるんだ。

 好きだろ?

 え、知らない?

 なんてまあ、可哀想に。


 さあ、いくらでもあるからね。



 アイーナは鍋一杯ほどのアイスクリームを抱えて、それでも話は止まらない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ