75 椅子の背
母船のキャプテンに尋ねたいことはただひとつ。
プリブを拉致した連中の心当たりがないかどうか。
アヤちゃんの行方、それも同時にわかるだろう。
事前に少しだけ調べてきてある。
この街の警察や治安維持組織、あるいは武装集団などの存在と目的、規模など。
ただ、それらの掌握範囲や住み分け、連携についてはわからないことも多かった。
この船の乗組員の中にも武装部隊がある。
宇宙船の機関部や中枢部を守るための組織だというが、その実態は明らかにされていない。
警察や治安維持部隊では、その目的が達せられないということなのだろう。
いわゆる軍、とも違うのだろう。
街の住人の中に、危険な人物や組織が紛れ込んでいることもあるのだろうか。
それとも、外部から攻撃を受ける可能性があるのだろうか。
そんなことも聞いておきたかった。
ゲートを通過し終えると、すぐさま正面の扉が開き始めた。
係員はかつて地球で流行った敬礼で迎えてくれる。
「シップ十六号キャプテン、オーシマン殿、ならびにニューキーツ長官レイチェル様がお見えになりました!」
扉の先には、また違う展望室が広がっていた。
窓の外には、七色の光が渦巻いている。
なんとなく、不気味な液体の中にいるような気分。
数歩進んだところで、オーシマンが立ち止った。
部屋の中央部に、ぽつんとひとつ、椅子が置かれてあるだけ。
椅子の背だけが見えていて、そこに座っているであろうこの部屋の主の姿は見えない。
母船の船長キョー・マチボリーは常に司令室にいると聞いていたが、ここがそうだろうか。
計器や機器らしきものも、デスクも何もない。
毛足の長い青い絨毯が敷き詰められてあるだけの空虚な部屋。
オーシマンに促されて私は椅子に歩み寄っていった。




