72 プリブのことだけど
チョットマの病気。
厄介な病いだ。
ユウははっきりとは言わなかったが、いわば、精神を乗っ取られるということではないか。
乗っ取られるとまでいかなくても、歪められてしまう。
そんなウイルスとの戦い。
宇宙にはなにが潜んでいてもおかしくない。人にとっては未知の病原体。
そんな世界に飛び出してきた地球人類、ニューキーツの人々。
今更、強烈に恐ろしいと思った。
パリサイドにはすでにある程度の耐性が備わっているとしても、地球人類は赤ん坊のような無防備を晒している。
チョットマの瞳や唇を見つめながら、イコマは不安を消せないでいた。
と、扉が開き、レイチェルが飛び込んできた。
「チョットマ! 大丈夫? 気分は?」
入ってくるなり、レイチェルはチョットマに覆い被さるようにして抱きしめた。
「ゴメン! 来るのが遅くなって!」
「来てくれて……、あり……がとう……」
まだ流暢に話せないチョットマを、レイチェルはもう一度抱きしめて頬ずりした。
ひとしきりチョットマを励ました後、レイチェルは改まった口調になった。
「スジーウォン、報告が遅くなった」
「あ、それは」と、慌てて止めようとしたが、間に合わない。
レイチェルはその名を口にしてしまっていた。
今のチョットマに聞かせるべきでないもうひとつの名を。
「プリブのことだけど、調べてきたことを」
チョットマの様子に変化が起きた。
「あっ、無理するな」
体を起こそうとしている。
「まだ、横になってて」




