65 それをシンラと呼ぶ
「数百年前、ダークエネルギーと呼ばれていたものです。しかし、それは当時考えられていたものとは全く異なっていました」
ダークエネルギー。
宇宙空間を支配し、星をはじめとするすべての物質を動かしているエネルギー、というのがかつての理解。
ビッグバン以降、宇宙の爆発的な膨張を今もなおもたらしているのも、このエネルギーだと言われてきた。
その一端を掴んだからこそ、人類は宇宙に飛び出すことができたのである。神の国巡礼教団のように。
「しかし、それだけではなかったのです。もっと強大で、この宇宙そのものともいえるエネルギーだったのです」
よくわからない。
黙って聞くしかないし、キョー・マチボリーの雄弁は止まらない。
「長官、ではかつて、ダークマターと呼ばれたものの正体が何であったか、お知りになりたくはないでしょうか」
まあ、知りたいかと言えばそうかもしれない。
キョー・マチボリーが言うに、この理解無くしてパリサイドがなぜ真っ暗で荒涼とした宇宙空間で生きていけるか、理解できないという。
「ダークマター、それを私達はシンラと呼んでいます」
私がまだ地球に住んでいたころ、宇宙を構成する物質の数パーセントしか人類は知りえていないと言われていたものです。
つまり、それ以外のなにかを総称し、ダークマターと呼んでいたわけです。
人類は探し方を間違っていたといえるでしょう。
それは、微細であれ、質量や電荷といったある形質を持つ物質を探していたからなのです。
やはり、興味のある話ではなかった。
しかし、キョー・マチボリーの話は分かりやすく、人を引き込む話し方をした。
気持ちは急くが、パリサイドの秘密に迫る話であると言われれば、聞いておかねばなるまい。




