6 生暖かい怒り
それにしても……。
歩みを速めながら、ンドペキは再び、あてもない思考を弄んだ。
自分でもわかっている。それが悪い癖であることを。
かつて、マトの身を恨み、サリを殺して、という妄想に憑りつかれていた日のことを、今でも思い出すことがある。
あの日から、俺たちは……。
さまざまな出来事があり、今はこうして、思ってもみない境遇にある。
そういえば、イコマと意識を同期していたころ、ユウが、こんなことを言った。
パリサイドの身体を、呪われた身体、だと。
あれきりそんな話はしていないが、イコマとはしているのだろうか。
ンドペキは舗装に目を落とし、別のことを考え始めた。
一体あいつは何をしたんだ……。
思考はプリブのことに移行する。
連行されるほどの、なにを……。
最近のプリブは……。
プリブだけではない。
地球から救出された誰もが、これといってすることのない日々を送っている。
時折、サワンドーレのような講師役のパリサイドから、授業を受けるだけ。
プリブはスミソと共に、チョットマの付き人然として、世話を焼いているだけの毎日ではなかったか。
そんな男がどうして。
スジーウォンの悩みは痛いほどわかる。
プリブとは何者かと問われれば、元ニューキーツ東部方面攻撃隊の隊員である、としか言いようがない。
今回のことが、攻撃隊と何ら関係はないと、言い切れるはずがないのだ。
陽が昇れば、新たな動きがあるのだろうか。
そしていつも心から離れないのは、ベータディメンジョンに残してきたパキトポークたちのこと。
エネルギー渦巻くあの次元で、無事にいるだろうか。
相変わらず巨体を揺すって、人々をリードしているだろうか。
ヌヌロッチとはうまくやっているだろうか。
ん?
ンドペキは立ち止まった。
これは……。
いつしか、樹脂製の舗装は硬い石に変わっていた。
ここは!
顔を上げた。
ニューキーツ!
な!
身体に冷たいものが走った。
ここは!
己の部屋の前ではないか!
かつての。
慎重に辺りを見回した。
まぎれもないニューキーツの街並み……。
夜のとばりに沈んでいる陰気な街並み……。
霧が出ているのか、街灯の光はぼやけているが、懐かしい通り……。
くっ。
身体に走った冷たさは、たちまち生暖かい怒りに変わった。
新手のバーチャルに違いない。
ふざけやがって!
こんな遊びにはめやがって!
なんでも出てきやがれ!
イルカの少年でもなんでもいいぞ!
地面に吸い付くようにピクリとも足を動かさず、全身に力を漲らせた。
さあ、来い!
敵意のある仕掛けなのかどうか、そんなことはどうでもいい。
俺を弄べると思ったら、大間違いだ!
来やがったな。
暗い街路を歩いて来る者の姿があった。