59 なかなか妙な男でね
プリブの一件が起きてから、レイチェルはその捜索に奔走していた。
アヤのことも加わり、寸暇もないここ数日。
「プリブやアヤちゃんのことはもちろん、この船の社会的組織やそれを動かしている中心人物のこと。前提として、それも知っておいて欲しい。少し長い話になるけど、いい?」
「もちろん。チョットマの身体に障りさえしなければ」
「じゃ、チョットマ、休憩したくなったら言ってね」
「もう、大丈夫だって。でも、了解。ありがとう」
チョットマが快活に答えた。
「まず会ったのは、この母船の船長、キョー・マチボリーという男」
あけぼの丸の船長から紹介してもらったという。
この人を最初に選んだのは、船長という立場が中立的な位置ではないかと考えたからだし、宇宙船の中で起きたことに対して、公平な目で見ているのではないかと考えたから、だという。
そんな前置きをしてレイチェルが語り始めた。
「なかなか妙な男でね。三日前……」
私は母船スミヨシの、つまり街の中央部にそびえる柱の中にいた。
宇宙船の構造を支える柱は街の至る所に立っているが、中央のそれはことさら巨大で、直径はゆうに百メートルを超えている。
構造柱であると当時に、宇宙船を動かす組織の数多のオフィスも兼ねている。
あけぼの丸の船長オーシマン。
彼に連れられ、その柱の中にある特別なエレベーターで数百メートル登って行った先には、街を見渡す展望デッキがあった。
街の天井に張り付いているような格好で、いつもの街がまるでジオラマのように見えた。
ここで待つように言われ、手近なスツールに腰を下ろした。
誰もが入れる場所ではない。
いたることろに武器を携えた監視員が立っている。
街を見下ろして。
彼らの目が自分にも注がれているのを感じて、居心地はよくない。
ただ、それほど待たされることはなかった。
モーター音がしたかと思うと、部屋の中央、天井から螺旋階段がくるくる回りながら降りてきた。
階段に立ったオーシマンが、メリーゴーランドのように回っている。
「お待たせした。こちらへ」
オーシマンの横に立つと、階段はすぐさま上昇を始め、やがて天井内に収まって止まった。
先には短い通路があり、明らかにセキュリティーチェックをするのであろうゲートが物々しく並んでいる。
突き当りには、無表情な係員がこちらを見つめている。
気後れする様子もなく先を行くオーシマンについて、私もゲートをくぐっていった。




