57 ウイルスの脅威
この状態を抜け出せなければ……。
ユウが小声で話してくれる。
万一の場合を。
「あのままの状態、続くことはないのよ」
「……」
「いずれ、早ければ今にも、目が覚めるはず」
「そうなのか」
ほっとしたのも束の間、
「その時が一番大切なのよ」と、釘を刺される。
ウイルスの脅威から抜け出せるかどうか、目覚めてからの数時間にかかっているという。
「楽しかったこと、うれしかったこと。そういうことをしっかり思って、自分を見失わないようにしなくちゃいけない」
「自分を見失う……」
「それができれば、数時間後には元のチョットマに戻ることができる」
「できなければ……」
ユウが言いにくそうに、しかしきっぱりと言った。
「精神が壊れてしまう」
「なっ……」
「つまり、気が……、狂う……」
「……」
「でも、それは稀」
九割以上の確率で回復するという。
安心してよいのか悪いのか、わからない話だったが、一割以下とはいえ危険が迫っていることだけは確か。
「一見、回復したようでも、なんとなくその人じゃなくなってしまったような例もある」
すっきり治るというわけでもないようだ。
「それって」
後遺症?
あるいは、ウイルスに負けてしまった?
身体や意識を乗っ取られて、というような?
「発現率はかなり高い。まあ、普通の生活に支障があるわけじゃないから」
「再発は?」
「わからない。すべての患者の予後が延々と追跡されているわけじゃないし、そもそも原因さえ掴んでるわけじゃないから」




