49 そうね、やっぱり、あれかな……
イコマはチョットマの瞳を見つめ続けた。
キラキラしているが、一点に静止して、時折瞬きをする。
チョットマの歌の先生、一つ目のお姉さんが、心に沁みる歌の数々を唄ってくれている。
Ah Ah
だから、だから、そばにいて
誰もが固唾を飲んで見守っている。
お!
チョットマ!
瞳が揺らいだ。
と、ゆっくりまぶたを閉じ、そして開いた。
瞳が動き、目が合った。
「……パパ……」
「気がついたか」
頬が動き、少しだけ微笑んだ。
「先生……、ありがとう……」
一つ目のお姉さんが、ああ、あなた、いつも、わたしのそばに、と唄いながら、唇をチョトマの頬に押し付けた。
「さあ、チョットマ。聞いてただろ」
チョットマがわずかに頷いた。
「楽しかったことを聞かせてくれ」
「うん……」
しかし、チョットマは苦しそうに顔をゆがめた。
「まだ無理か?」
「ううん……」
ユウの唇が、大丈夫と動くのを確認して、イコマは続けた。
「最近あった出来事を。楽しかったことを思い出すんだ。いいね」
「わかった……」
チョットマの唇が見る間に赤みを帯びてくる。
「ゆっくりでいいよ。他のことは考えず、その時のことだけ思い出して」
今度は少し強く頷いた。
楽しかったこと……。
そうね、やっぱり、あれかな……。
たどたどしい話し方だったし、時折顔を歪めるが、ライラが差し出したソーダ水のストローを咥えた。




