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46 どうせ、急ぐ散歩ではない

 様々な商店が雑然と積み重なっているような地域である。

 地球人類が用のある店は少ない。

 そもそも、ものを買うのに、わざわざこのようなところにまで足を伸ばす必要はない。


 人違いか、と思ったが、人が消え失せた辺りまで来ると、小さな発見をした。


 何の店かわからないが、夢殿と書かれたドアと芭眉堂と書かれたドアの間に、目立たない入り口があった。

 まるで掃除道具かゴミ箱を収納してあるかのような小ぶりな開き戸。

 木目が浮き出てかなり古びた様子。


 ふうん。

 スゥがこんなところに用があるはずがない。



 いや、待てよ。


 そろそろ商売を始めるからって、空室を探していると言ってたな。

 でも、まさかこんな、隙間みたいな所に。


 が、押せど引けど、開き戸は風情とは裏腹にピシとも動かなかった。



 イコマは開き戸を見下ろし、しげしげと辺りの空気を嗅いだ。

 どうせ、急ぐ散歩ではない。

 今日も、特段の用はない。


 無機的な母船内ではあるが、地域によって空気感というものはある。

 宇宙船だから機能一辺倒かというと、そうでもない。

 街を構成する素材は、金属的で同一のパネル状建材ばかりだが、手垢ひとつついていないかというとそうでもない。

 埃も積もっているし、湿っていたりもする。


 船が古いからかもしれないし、パリサイドが人肌感を大切にしているからかもしれない。

 この開き戸のように木製と見えるものも随所にある。

 いずれにしろ、地球らしさといえるなにかがここにはあった。



 この地域に特別な臭いが立ち込めているわけではない。

 それでもこの街がダークサイドであることは感じられた。

 いかがわしい店が建ち並んでいる、といえばいいだろうか。

 果たしてそのような店の存在が、宇宙船の中に許されているのかどうか、わからないが。

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