44 無駄なこと
というのが、イコマの認識である。
改めて部屋を覗いて、記憶に漏れがないかどうか、見渡してみた。
ない。
念のため、と中に入った。
たちまち扉は閉まり、消え失せる。
気密性が高いため、鼓膜に少し圧力がかかる。
やはり何もない。
ふむ。ベンチは既に空に浮かんでいるのか。
座ってみても、新たな発見はない。
うむ、背後を見ることはできないな。
それほど、みっちりと座面にホールドされている。
コントローラのキャンセルボタンに触れ、ホールドが解けるのを待って立ち上がった。
もう一度、球体の中を見回してみるが、先ほどと変わったところはない。
ドアハンドルに触れて、部屋が元の立方体に戻るのを見届けただけだった。
無駄なことをしているな。
我ながらそう感じたが、なおも他の部屋で同じことをしてみた。
三階にも行き、一階でも。
感謝祭だというのに珍しく、使用中の部屋があった。
いや、使用中なのだろう。
ドアは外側も壁と同化していて、そこにドアがあることは、飛んだ部屋番号が示すのみ。
ドアがあろうと思われる壁に触れ、なぞっていけども、硬く冷たい感覚が指に残るだけ。
一般人が使う部屋とは別に、VIP用の部屋があるのだろうか。
例えばヴィーナスのような議員が使うような部屋は。
通路に掲げられている案内図に、そのような記載はもちろんない。
曜日や時間帯によって、このオペラ座の空間に、利用方法に、何か変化はあるだろうか。
あるいは、あの日だけ、特殊な日だったのだろうか。
そもそも、あのマスカレードの饗宴の中に、何かヒントが……。




