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44 感謝と敬意を表すために

 確かに。

 いつごろからだろう。

 ライラと呼ばずに、おばあさんと呼ぶようになったのは。

 地球を出てからだ。


 言われなくてもわかる。

 それがとても失礼な呼び方だということは。

 マトやメルキトは数百年も再生され続けて生きてきた。

 現在の年齢や見かけの年齢が意味をなさなくなって久しい。

 市民の間に、攻撃隊の中でも、見かけ年齢による上下関係はない。


 でも、私はレイチェルのクローンとして生み出された命。

 実際、まだ三年も生きていない。

 スゥの洞窟やエリアREFに籠って、アンドロ軍と対峙していたころと違って、今は、平和。

 何もすることがない。

 この緊張感のなさ。

 つい、見かけ年齢で人を判断し、おばあさんなどと呼んでしまっていたのは、それが理由かもしれない。


「ごめんなさい。ライラ……」

「ああ、それでいいよ」



 ライラ、機嫌悪いみたい。


 本当は、この船に避難するつもりではなかったと思う。

 アンドロ次元に夫のホトキンと一緒に移行したのだから。


 でも、神の国巡礼教団に取り込まれ、パリサイドとなった娘のサブリナを追って、またこの次元に戻ってきたのだ。

 悲しいことにサブリナはエーエージーエスの中で死んだが、もはやアンドロ次元に戻る方法はなく、いわば仕方なくパリサイドのこの船に避難することを余儀なくされたのだ。



 その時のことをチョットマはよく覚えている。


 情けなかった自分。

 大好きなンドペキに悪態をつき、泣きわめき、どうしようもなく惨めだったあの時。


 こちらの次元に戻るというスミソに抱かれて、こちらに戻ってきた。

 ンドペキと離れることは辛かったが、身から出た錆と、受け入れるしかなかった。


 結局、ンドペキも娘のアヤちゃんを探してこちらの次元に戻ってきてくれた。

 どんなにうれしかったことか。



 まだ一月ばかり前のこと。

 でも、だれももう、あの頃のことを話そうとしない。

 誰にとっても辛い思い出だったし、話したところでどうなるものでもない。

 死んだハクシュウはじめ隊員たちが生き返るわけでもなく、パキト―ポークと会えるわけでもなし。


 太陽フレアの脅威から救出してくれたパリサイドに、感謝と敬意を表すためにも、昔話は慎んでおくべき。

 少なくとも東部方面攻撃隊の隊員にはそんな空気があった。

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