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37 キャプテン

 プリブの一件が起きてから、レイチェルはその捜索に奔走していた。

 アヤのことも加わり、寸暇もないここ数日。


「プリブやアヤちゃんのことはもちろん、この船の社会的組織やそれを動かしている中心人物のこと。前提として、それも知っておいて欲しい。少し長い話になるけど、いい?」

「もちろん。チョットマの身体に障りさえしなければ」

「じゃ、チョットマ、休憩したくなったら言ってね」

「もう、大丈夫だって。でも、了解。ありがとう」

 チョットマが快活に答えた。




「まず会ったのは、この母船の船長、キョー・マチボリーという男」

 あけぼの丸の船長から紹介してもらったという。


 この男を最初に選んだのは、船長という立場が中立的な位置ではないかと考えたからだし、宇宙船の中で起きたことに対して、公平な目で見ているのではないかと考えたから、だという。

 そんな前置きをしてレイチェルが語り始めた。


「なかなか妙な男でね。三日前……」




 私は母船スミヨシの、つまり街の中央部にそびえる柱の中にいた。


 宇宙船の構造を支える柱は街の至る所に立っているが、中央のそれはことさら巨大で、直径はゆうに百メートルを超えている。

 構造柱であると当時に、宇宙船を動かす組織の数多のオフィスも兼ねている。


 あけぼの丸の船長オーシマン。

 彼に連れられ、その柱の中にある特別なエレベーターで数百メートル登って行った先には、街を見渡す展望デッキがあった。

 街の天井に張り付いているような格好で、いつもの街がまるで箱庭のように見えた。

 ここで待つように言われ、手近なスツールに腰を下ろした。


 誰もが入れる場所ではない。

 いたることろに武器を携えた監視員が立っている。

 街を見下ろして。

 彼らの目が自分にも注がれているのを感じて、居心地はよくない。



 ただ、それほど待たされることはなかった。

 音もなく、部屋の中央から螺旋階段がくるくる回りながら降りてきた。

 階段に立ったオーシマンが、メリーゴーランドのように回っている。


「お待たせした。こちらへ」


 オーシマンの横に立つと、階段はすぐさま上昇を始め、やがて天井内に収まって止まった。

 先には短い通路があり、明らかにセキュリティーチェックをするのであろうゲートが物々しく並んでいる。

 突き当りには、無表情な係員がこちらを見つめている。



 気後れする様子もなく先を行くオーシマンについて、私もゲートをくぐっていった。


 母船のキャプテンに尋ねたいことはただひとつ。

 プリブを拉致した連中の心当たりがないかどうか。

 アヤちゃんの行方も、それと同時にわかるだろう。


 事前に少しだけ調べてきてある。

 この街の警察や治安維持組織、あるいは武装集団などの存在と目的、規模など。

 ただ、それらの掌握範囲や住み分け、連携についてはわからないことも多かった。



 この船の乗組員の中にも武装した部隊というものがある。

 宇宙船の機関部や中枢部を守るための組織だというが、その実態は明らかにはなっていない。

 警察や治安維持部隊では、その目的が達せられないということなのだろう。

 いわゆる軍、とも違うのだろう。


 街の住人の中に、危険な人物や組織が紛れ込んでいることもあるのだろうか。

 それとも、外部から攻撃を受ける可能性があるというのだろうか。

 そんなことも聞いておきたかった。




 ゲートをくぐり終えると、すぐさま正面の扉が開き始めた。

 係員はかつて地球で流行った敬礼で迎えてくれる。


「シップ十六号キャプテン、オーシマン殿ならびに、ニューキーツ長官レイチェル様がお見えになりました!」

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