33 尻込みしてしまうのは己の性分
シチュエーションがどうあれ、どんな格好でいようが、そして誰といようが、尻込みしてしまうのは己の性分。
「こんな隅っこで座ってちゃ、だれも声掛けてくれないぞ」
と、チョットマをけしかけるのみ。
そんならちょっくら誘われてやるか、とチョットマはカーテンをたくし上げ、出て行った。
姿が見えなくなると、急に寂しさが募ってくる。
腰を落ち着けたのは、ホールをはるか下に望む三階廊下の小ブース。ホールに突き出した特等の貴賓席。
さすが、バーチャルだけのことはある。
何もかもが、至れり尽くせり。
チョットマにも、きっとすぐに素敵な男性が声を掛けてくれるのだろう。
ボーイが先ほどから何やかやとご馳走を運んできてくれる。
ケーキや珍しい果物。クッキーやチョコレート。
そしてなぜか卵料理。
どこの国の青年か、抜群の美形。ボーイである印、トレーをいつも抱えている以外は、騎士の格好が板についている。
目が合った。
と、イコマのグラスにシャンパンを注ごうとする。
「いや、別のものを」
「かしこまりました」
ボーイは、たくさんの酒の名を上げたが、それがワインなのかブランデーなのか、はたまたリキュールなのか分からない。
「ビールは?」
はっ、とボーイは直立してから出て行ったが、中世のこんな豪華な舞踏会にビールなどあろうはずもない。
追い出してやったのだ。
常にかしづかれていては、肩が凝る。
ふうっ、と息をついて、イコマは心置きなくフロアに身を乗り出し、ごった返す人々を眺めた。
アラビアの姫はどこにいるかな。




