3 単独行動は慎むようにって
「まあ、座って」
イコマは、冷静に穏やかに話せ、と自分に言い聞かせて、二人に椅子を勧めた。
腰を下ろすチョットマの緑色の髪が、ふわりと大きく揺れた。
舞い上がった髪は、ゆっくりと小さな肩に、背に落ちていく。
この船の重力は、地球上に比べて半分ほど。
「あけぼの丸」でのそれは地球より少し小さい程度だったが、パリサイドの世界ではもっと小さいのかもしれない。
宇宙空間を飛び回る彼らにとって、重力は極限にまで小さい方が都合がいいのだろう。
天体による引力がほとんど働かない宇宙の只中。
ダークエネルギーだけが渦巻く、暗闇の世界。
船の中で、どのようにして重力を生み出しているのか知らないが、パリサイドはそれを自由にコントロールしている。
あけぼの丸が地球の重力圏から離脱し、全員が母船スミヨシに移乗してから、ひと月足らず。
太陽系の黄道に直角に進路を取っている。
惑星が居並ぶルートではない。
すでに太陽から約0.15光年ほども離れた地点を航行中。
黄道に沿って飛んでいるなら、太陽系惑星群やカイパーベルトは遥か後ろに過ぎ去り、オールトの雲さえも通り過ぎようとしている計算だ。
すさまじい速度である。
かつて、神の国巡礼教団が地球を飛び立った時の艦の性能に比べて、革新的な進歩である。
「で、隊長は?」
「うん。これから暫くは単独行動は慎むようにって」
事情が掴めるまで、所在を明確にしておくようにと。
武装はこれまで通り任意。だが、原則は纏わないように、とされている。
当局に警戒されて得することは何もない。
スジーウォンが下した判断は正しい。
逮捕、とチョットマはいうが、公式な手続きを経た連行かどうかもわからない今、隊として最善の態度は身を硬くしておくこと。脇を見せぬこと。
「レイチェルには?」
「スジーウォンが」
「うむ」
「万一を考えて、誰かが必ずレイチェルの身辺を固めるって」
「臨戦態勢?」
「ううん、そういう感じでもないんだけど」
スミソが言い直した。
「レイチェルに危害が及ぶことはないと思われます。これは我々、隊の問題でしょうから」
「ふむ……。警察へは?」
「レイチェルとスジーウォンが。でも、取り合ってくれなくて。きっと行くところが間違っているのでしょう……」
確かに。
警察署なるもの、さらに言えば政府機関の建物がどこにあるのか、知らない。
社会を統べている公的機関の構成さえ、まだ理解していない。




