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298 一組の男女、という言葉はしっくりこない

「まあ、とはいっても、奴が事件の真相に迫る重要な言葉を吐いたわけではない。むしろ混乱させたというべきだろう」


 ある日、講義が終わった時に、奴はンドペキにこう言った。

 神が一組の男女を探している、とね。

 その言葉によって、その男女とは、アヤとプリブではないか、と考えてしまった。


 結局、サワンドーレはあのドタバタ以降、姿を見せていない。



 ちなみに、アヤとプリブの間に、特別な関係はない。

 攻撃隊の仲間という意識はあっても、恋愛感情はない。

 アヤからもプリブからも。

 の、はず。

 一組の男女、という言葉はどうもしっくりこない。



 アヤの顔を見た。

 話してしまうけど、いいかい。


 アヤは俯いている。

 彼女も、まさに被害者。


 洗脳されかかっただけでなく、危うく死にかけた。あろうことか、昔の傷さえ逆なでされて。

 今ここでその顛末を話すことは、もちろんアヤは了解済みだ。



「フイグナーという男がいた。ンドペキに謝りたいといって、訪ねて来たパリサイド。ニューキーツの仮想の海で暮らしていた特殊なアギ。イルカの少年」


 こいつも僕と同じようにパリサイドの体を得ていた。

 とんでもない奴。

 元の名をミズカワヒロシ。アヤの最初の結婚相手。



 易々とミズカワヒロシにアヤの居場所を教えてしまい、結果としてアヤに重篤な傷を負わせてしまったこと。

 心の痛みはかなり薄まったとはいえ、悔やんでも悔やみきれない出来事だった。


 奴の心は分からないまま。

 死んでしまったわけだが、アヤと再び関係を持てないのなら、心中するつもりだったのかもしれない。


 くそくそくそ。


「しかし、奴のこの行動によって、サワンドーレが言った一組のカップルの意味がはっきりしたといえる」



 パリサイドに巣食う宇宙生命体ロームス。


「はっきり言えることがある。奴らは、いや奴はというべきかな、は人間のある特殊な意識に興味を持っていた。それはチョットマの聞き耳頭巾を使った奴との会話で推測することができる」



 恋、あるいは愛……。



「最初に取りつかれたンドペキは、ユウやスゥ、そしてレイチェルの夢を見た。スミソがどんな夢を見たのか聞いていないが、きっと」


 スミソは、今、美しい女性の顔をして俯いている。

 聞けば答えてくれるだろうが、聞かぬが華、というもの。



「そしてチョットマは、ンドペキの夢を見た」


 そして、決定的な話。

 チョットマが聞き耳頭巾のショールを頭に巻いた途端、チョットマの頭の中に木霊した声。

 それは、こう言っていたんだ。

 ンドペキを想う気持ちとはどんな気持ちか、と。

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