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293 もう今しかないかもしれない

 親しい者たちが、今、三々五々、なんとなく車座になって床に尻を付けている。

 アヤとチョットマとシルバックが、テーブルに残っていた料理を小皿に取り分け、飲み物を並べていく。

「思い出すなあ」と、隊員が嬉しそうな声をあげた。


 まだ、彼らがニューキーツの郊外でマシンを狩っていた頃。

 初めてヘッダーを取り、素顔を見せあったあの時……。

 裏切り者ンドペキに当時隊長だったハクシュウが殴りかかったあのくぼ地……。

 そしてスゥの洞窟での日々……。

 今、隊員達の目には涙さえあった。



 型どおりに、スジーウォンが攻撃隊の解散を告げた。

 前隊長であるンドペキが、副隊長であるコリネルスが短い挨拶をした。


 そして隊の総指揮官である、ニューキーツ長官レイチェルが、全ての隊員ひとりひとりに声を掛け、キスし、抱きしめていく中、隊員達が互いをねぎらった。


 装甲を身に着けている者はいない。

 チョットマのあの歌を口ずさむ者がいる。

 何を数えているのか、指を折っている者がいる。

 互いを呼び合う声が響く。

 男も女も、誰彼なしに抱きついては、涙ぐむ者がいる。



 しかしやがて、部屋の中から声は消え、動きも止まった。

 料理の残り香だけが部屋の空気に華やぎを与えているだけとなった。


 イコマは、人々の顔を順に眺めていった。

 先ほどまでの少々浮かれ過ぎた高揚感は消え失せ、心の奥に沈んでいた亡き人への思いが浮かび上がってきている。



 そうだ。


 話せるのはもう今しかないかもしれない。


 聞いて楽しい話ではないし、何かを得られるわけでもない。死んだ人が生き返るわけでもない。

 しかし、自分の得た結論をここに提示し、みんなに判断してもらうことは必要……。



「じゃ、全員、座り直して。私も座るし、イコマさんも」

 と、スジーウォンが促してくれる。



「事の発端は、プリブがチョットマとスミソの目の前で拉致されたこと」


 そう言ってイコマは、ワイングラスを置いた。

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