24 アヤちゃんを探しに
「パパ! 心配してたんだよ!」
やっとイコマが返って来た。
チョットマは、パパの無事を見届けると、ホッとしてまずは抱きついた。
「どこ行ってたのよ!」
「いつもの散歩」
「大変なんだよ!」
「いつも君は巻き込まれてるね。大変なことに。今度はどんな異変?」
「私じゃないよ。ンドペキとスミソが! それにアヤちゃんが!」
パパから有効な手立ては聞けなかったが、パパ自身は何事もなかったようでチョットマは安心した。
「ねえ、私、アヤちゃんを探しに行ってくる」
「うむう」
「ね、行ってもいいでしょ」
「スジーウォンが向かってくれてるんだろ。その報告を待ちなさい」
「でも」
アヤちゃんはンドペキの家族ということになっているが、元はといえば、パパの娘。
六百年前に、ユウと共に一緒に暮らしていたと聞いている。
きっと不安なはず。
やっぱり、
「そうだな。じゃ、一緒に行こう」と、部屋を飛び出していった。
「あ、待って。鍵、閉めなくちゃ」
チョットマは、イコマと共に昨夜アヤが向かったと聞かされた地区に向かった。
気持ちは急く。
プリブのことも、ンドペキやスミソのことも心配。
どうしても早足になるし、パパと何をどう話せばいいのかもわからない。
心配な気持ちを挙げ募のっても、不安が減るわけでもない。
パパは黙ったまま。
心配で心配で、たまらないのだ。
それにしても、なぜ、アヤちゃんはそんなことをしようとしたのだろう。
聞き耳頭巾の使い手だから?
だからって、なにも宇宙船の中で。
どうしても行かなくちゃいけなかった理由が?
誘われたとか?
ンドペキがああなってしまったことと、関係がある?
頭を捻ってみたってわからない。
パパに聞いてみたいが、うるさがられるだろうな。
チョットマとイコマは黙々と通りを急いだ。
かなり歩いて、スジーウォンとシルバックと行き会った。
「アヤちゃんは?」
「見つからない」
隊員三十名ほどで辺りの街路をくまなく見て回ったという。
「街の人にも聞いてみたんだけど」
シルバックがすまなそうな顔をした。
「エリアを広げてまだ探してるけど、一旦、スゥに報告しようと」
パパが深々と頭を下げた。
「ありがとうございます」
「あ、イコマでしたか」
地球から救出された者は、まだパリサイドの見分けがつかない。
スジーウォンもそうだ。
チョットマとて、パパだけは見分けがつくものの、背格好が、なんとなく目の辺りが、という程度で心許ない。
「アヤがいつも迷惑ばかり掛けて。エーエージーエスの件から始まって」
「とんでもない。彼女が参加してくれて、とても助かってるし、皆が喜んでます」
パパは、また頭を下げて、
「では、私は探しに行ってきます」と、チョットマに目配せした。
「チョットマは、ンドペキの元へ行っておあげ」
「えっ」
「ンドペキやスミソが目覚めたとき、君が目の前にいる方がいいだろ」
「じゃ、私が案内を」と、シルバックが言ってくれた。
チョットマは久しぶりにスジーウォンと二人きりになった。
以前から厳しい人だと思っていた。毒舌でもある。
ハクシュウが死んだことによって、それに磨きがかかり、かつ、女性らしさも覗くようになった。
苦手というわけではない。彼女の優しさは身に染みている。
ただ、慣れていないだけ。
並んで歩きながら、少しぎごちなく話しかけた。




