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194 真相9 僕たちはまだこうして生きているんだし

 すべてを話し終わった。


 しかし、それでなんだというのだ。

 虚しさが残った。



「実際、じゃ、青蟻衆とは何だったのか」

 これについて、僕は何もわからない。

 唯一の手がかりは、ベータディメンジョンの青蟻衆が語ったという言葉。

 パリサイドを瞬時に消滅させ、云々という言葉。


 つまり、パリサイドは敵になったわけだ。

 いつか、未来に。

 もちろん、ロームスに操られた人類が。

 それを阻止する部隊。青蟻衆……。


 しかし、青蟻衆とは、なんなのだ。

 結局、そこに確かなことは何もない。



「言えることは、こういうことかな。想像するしかない」


 僕たち人類の未来で戦いがあったと想定しよう。

 ロームス率いるパリサイドと、人類の間に。

 人類は負けた。あるいは絶飯寸前に追い込まれた。

 そこで、未来の人類は過去に遡り、パリサイドもろとも例の宇宙生物を滅ぼそうとした。



 なんの根拠もない。

 ただ、想像するだけ。

 イコマは正直にそう言った。



「でも、それでいいんじゃないか」

 ライラやプリブ、そしてオーエン。

 奈津お婆さんも未来から来た人間で、自分達の手でいつか、ロームスを根絶しなければいけないという使命を背負っていた。

 そう考えておいて。


 僕たちはまだこうして生きているんだし。

 生きている限り、人類の未来に僕たち自身、責任があるわけだから。




 チョットマの目が潤んでいた。

 その眼を拭って、聞いてくる。


「ねえ、パパ。それで、ライラおばあさんは? 死んだの?」

「ああ。死んだと思うよ」


 宿命とか運命とか、最も嫌いな言葉だったが、ここで他にいい言葉は思い浮かばない。


「それが彼女の定めだったんだろう」



 人類は過去に遡っていくことはできるようになった。

 例えば、ベータディメンジョンを経由して。

 しかし、未来に行くことはできない。

 未来の人類もそうなんだと思う。


 彼女は、プリブも、オーエンもホトキンも、片道切符しか持っていなかったんだ。

 未来の人類を絶滅から救うために、時間を遡り、将来の敵であるロームスを倒す機会を待っていたんだ。

 そしてことを成し遂げた後には、自ら消滅する定めだったんじゃないかな。





 話は終わりだ。

 ポケットから、小さな藍色の石を取り出した。



「宇宙船スミヨシがパリサイドから太陽系にスキップしたとき。これは、僕のすぐ横に落ちていた石。明らかに人工的に作られた石」


 グラン・パラディーゾが暴発し、ベータディメンジョンのエネルギーがほとばしるまさしくその時、僕はライラのすぐ後ろに立っていた。

 ライラは、こう呟いていた。



 これで奴は滅びる。

 もう未来永劫、人類を襲うことはない……。助かった……。

 長かった……。長い旅だった……。

 私の使命も、これで……。

 さあ、オーエン。私もひと思いにやっておくれ……。




「僕は、この石はライラだと思う」


 形見じゃない。きっとライラ自身……。

 僕はこれを握りしめて、今までのことが何だったのかを考えてきた。

 この石が、ライラが、何かを教えてくれたような気がしたし、そうでないような気もした。

 いずれにしろ、捨てられる代物じゃない。


 もしこれがライラだったら、僕が持っているより、もっとふさわしい人がいる。

 その人に渡したいと思う。



 長官レイチェル。

 スゥ。サキュバスの庭の女帝ライラの友人であり弟子でありライバル。

 アヤ。ラリアがこよなく心を寄せた聞き耳頭巾の持ち主。

 そして、可愛がってもらったチョットマ。


「さあ、どうするか、四人で話し合って」



 レイチェルは自分にその資格はないと言った。

 スゥやチョットマが涙を見せる中、ライラの石はアヤが預かることになった。

 きっと聞き耳頭巾がライラを慰めてくれるだろうからという理由で。

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