193 真相8 変装の名人
「そして、消えたオーシマン」
これにはチョットマから反応があった。
「あけぼの丸の船長も?」
「そうとしか考えられないね。まさか今更、ステージフォーに囚われたとは思えない」
青蟻衆だろう。
彼も、最後までいたと思う。
輸送船の船長とはいえ、このスミヨシのシステムを少なくとも地球から来た誰よりも熟知していたはず。
船長キョー・マチボリーの意識を弱体化させるのは、もっぱらオーシマン船長の役割だったかもしれない。
そしてきっと、ホトキンと一緒になって、グラン・パラディーゾに対して様々な細工をしたに違いない。
「ねえ、パパ」
チョットマが話を遮ってくれた。
「それで、プリブは?」
でなければ、想像を逞しくした、する必要のない話をもっと続けていただろう。
「嫌な言い方をするけど、怒らないで聞いて欲しい。プリブは、最後までオーエンに生かされていた。役に立つから」
証拠はないが、イコマは自信を持って、説明した。
「なぜ、プリブが拉致されたか。それは、彼が心をオーエンに奪われなかったからだ。ライラが言っていた。聞き耳頭巾のおかげで自分でいられる。プリブもそうだったんだ。つまり」
言葉に詰まった。
これを言って、いいのだろうか。
チョットマが、そしてスミソが傷つくのではないか。
しかし、プリブが死んだ今となっては、彼らは彼ら自身の力で乗り越えなくてはいけないこと。
「きっとプリブは、チョットマを愛するあまり正気を保っていたんだと思う」
強い愛のおかげと言ってもいいかもしれない。
来週、またマスカレードで会おうなんて約束をして。
それがオーエンの逆鱗に触れた。俺の言うことが聞けないのか、なんてね。
そして青蟻衆に拉致された。
どんな目にあったのか、どこでどう過ごしていたのか。それは想像さえできない。
しかし、彼は最後の最後まで自分の意識を持っていたんだ。
チョットマ、君を愛す。
とね。
チョットマは泣くまいと歯を食いしばっている。
スミソは審判を受ける者のように目を閉じている。
「でも、プリブは消されなかった。最後に、彼しかできない仕事があったから」
チョットマが口を開きかけたが、何も言わなかった。
「プリブの仕事、いや、趣味か。彼は変装の名人。というか、きっとそういう能力を持っているんだと思う」
アイーナに成りすまし、ミッションを確実に実行する指令を出すこと。
プリブなら巨大クッション姿であろうが、化けることに何の問題もない。
彼のストッカーに巨大クッションのコスチュームがあろうがなかろうが、そんなことは大したことじゃない。
オーエンは、万一最終段階でミッションが中止になる事態が生じないよう、万全の態勢を敷いたんだ。
アイーナを一時的に病にさせた。
そう。影武者役をプリブに。
ミッション直前のあの会議。




