192 真相7 「神」との闘い
「ところで、パリサイドの星に上陸する前日、オーシマンの船の乗船者名簿にない名前がたくさんあった」
キョー・マチボリーはライラの顔を見た途端、何かに気づいたんだ。
キャプテンが、そんな彼らを船に乗せるはずがない。
でも、彼らはどうなったんだ?
スジーウォン、聞いていいかい?
返事を待たずに、イコマは重ねて質問を投げかけた。
「攻撃隊の隊員にも不穏な行動をするも者が数人いた。単にサボタージュ、じゃないよね。で、彼らは、どうなったんだろう。最後に見たのはいつ?」
スジーウォンが肩をすぼめた。
「ミッションの前日かな」
「どうなったと思う?」
「さあ」
「オーエンに消されたんだと思う」
「……そうね」
オーエンの気性。
彼なら、秘密を守るため、不要となった者を消すことに何の躊躇もない。
攻撃隊に含まれていた青蟻衆は、まだ役立った方なんだろう。そこまで生き延びていたのなら。
僕はこう思う。
パリサイドの星に上陸する前日時点までに、かなりの人数がすでに消滅させられていたんだとね。
「ミッション開始時点まで残っていたのは、誰と誰だと思う?」
この質問はンドペキに投げかけたもの。
ベータディメンジョンで青蟻衆の噂を聞いているンドペキなら、今話していることに最も早くに気づいたはずだ。
「まずはオーエン、プリブ、ライラ……」
ンドペキが口ごもった。
当然だ。
その先の人物名となると、想像でしかない。
「あてずっぽうで言うと、その三人に加えて、ホトキン」
ライラの夫、オーエンの右腕。技術者だ。
彼は最後の最後まで必要だったろう。
オーエンはキョー・マチボリーを無力化した。
キャプテンとしての意識が及ばないスペースを、いたるところに確保した。
キョー・マチボリーはそれを認めている。
背中の出来物や内臓にできた腫瘍を例にしてね。
そしてやがて、オーエンはこの宇宙船のあまたのシステムを手に入れた。
しかしアギであるオーエンができないこと、物理的に何かをしなければいけないこと、それは技術者ホトキンの担当だったはず。
そして東部方面攻撃隊の数人を含めた百人ばかりの役割だったはず。
アギという言い方、なんだか懐かしいね。
と息を抜いたつもりだったが、誰も微笑みさえしなかった。
「グラン・パラディーゾが起動される数日前から白い霧は姿を消した。ロームスは察知していたんだ。オーエンがあのような方法で攻撃を仕掛けてくることを」
だから霧はどこかに避難したんだ。
グラン・パラディーゾを破壊するために、ステージフォーの連中を操るだけの量を残して。
オーエンも黙っちゃいない。
ロームスの目論見を阻止する。
兵のエネルギーパットを一気に放電させるという手を使って。
僕らの知らないところで、オーエンとロームスの戦いは始まっていたんだ。
ロームスはどこに退避したのか。
パリサイドのあの星なら、一網打尽。
オーエンの思惑通り。
結局、ロームスが死滅したかどうか。
知らんけど、ね。
今のストーリーも僕の完全な憶測だしね。
誰も聞く人、いないから。




