191 時の神に滅びの光を授けるなり
「ただ、青蟻衆。この実態はよくわからない」
それがここへきて、一気に活動を始めたわけだ。
オーエンの指揮の下、パリサイドの神、悪意を持っていたかもしれないロームスを滅ぼすために。
きっとオーエンは、グラン・パラディーゾの起動を千載一遇のチャンスと捉え、始動したんだ。
何十年も、あるいは何百年も潜伏させていた青蟻衆を覚醒させ、コントロールして。
彼らの目的については、ベータディメンジョンでンドペキやチョットマがヌヌロッチから聞いた話が参考になる。
地球から来たある女性がこう話していたという。
自分は別の世界から来た青蟻衆の一人。
ベータディメンジョンの莫大なエネルギーによって、宇宙を滅ぼす。パリサイドを瞬時に消滅させ、人類の未来を保つために来たのだ。
図らずも、自分はベータディメンジョンに来てしまった。
そのために覚醒が中途半端に終わってしまい、自分には手の打ちようがないし、何の指令も届かない。
百人の仲間がいるはずだが、互いにその存在を知らない。仲間だと思う人は名乗り出て欲しい。
と。
百人。
思い出して欲しい。
イエロータドのバー、ヘルシードで聞いた話。
ステージフォーが捕まえて洗脳したのはたかが数人。多くても十数人だろう。
じゃ、それ以外は?
簡単だ。
青蟻衆、つまりライラが言った青き衣を着た亡者ども。
プリブはその中に含まれるに違いないんだ。
イコマはここで話を切って、皆の反応を確かめた。
やはりそうか、とまではいかなくとも、なるほど、という顔をしている者。
気持ちを表すまいと厳しい顔をして俯いている者。
困惑の表情でスジーウォンやンドペキに目をやっている者……。
自分がそうであったように、誰もがある程度は予想できたことなのだ。
ライラの話を耳にしたことがある者なら。
青き衣を着た亡者ども。
仮面を投げ捨て。
時の神に滅びの光を授けるなり。
もう、この意味は説明するまでもないだろう。




