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188 真相4 完全武装した者とは

 ふう、とイコマは息を吐き出した。

 プリブがステージフォーとは何ら関係がないという事実の証明は、これで十分だろうか。


 いや。

 プリブの名や姿がどこにも出てこないというだけで、そこにいないという証拠にはなっていない。


 この話をするしかない。

 イコマはチョットマとスミソの顔を代わる代わる見た。




「チョットマ。最初、君が言ったことを覚えているかい」

「なあに」

「プリブを逮捕した連中、彼らはどんな服装だった?」

「えっと、武装していて、あっという間に……」

「スミソ。君はどうだい?」

「私もそのように覚えています」


 イコマは思わず鼻を鳴らした。

「もっとあるだろ。君たちが入れてくれた情報は」

 チョットマとスミソが顔を見合わせる。


 覚えていないかもしれない。


「君たちはこう言ったんだ。二人の武装したパリサイドが現れて、とね」

「あ、そうです。そう言いました。そのパリサイドは完全武装していて、僕達の目の前でプリブを捕まえたのです。僕もチョットマも抗議しましたが、受け入れてくれるどころか、全く無視されたも同然で。あっという間に走り去って、後を追うこともできませんでした」



 たいして重要なことではない。

 しかし、それが初期段階の思考を、全く果実のない方向へ導いたのだった。

 今ここでそれを指摘して、この二人を責めることが目的ではない。

 推理をより正しい方向へと誘う、前触れとして彼らの自尊心に少しだけ犠牲になってもらうだけだ。

 イコマはあっさりと話を進めていった。



「完全武装したパリサイド。あの宇宙船の中で、それは軍か、警察か、治安か、キョー・マチボリーの私兵しかなかったわけだ。しかし、もう一つ、ある。分かるよね。ニューキーツ東部方面攻撃隊。スジーウォンの部隊」

「えっ!」

 チョットマの驚きの声と共に、スジーウォンの顔が引きつった。


「もちろん、スジーウォンが差し向けた者ではない。でも、彼らがパリサイドだという証拠はあるかい?」


 チョットマやスミソにあろうはずがない。完全武装していたのだ。

 その装甲の中身がパリサイドだったのかどうか、分かりようがない。



「僕は考えた。アイーナの配下である軍ではなく、警察でもなく、治安でもなく、そしてキョー・マチボリーの部下達でないなら、東部方面攻撃隊しかないではないか」


 しかし、自分の仮説に自信を持てないでいた、とイコマは正直に言った。


「でも、ある時から、それは少しづつ確信に変わっていったんだ」



 パリサイドの軍の完全武装。

 それは、全く異質なものだった。

 後に、グラン・パラディーゾで初めてそれを見た。

 彼らの完全武装とは、東部方面攻撃隊のそれとは全く違うもの。

 あの時、それを見ていたのなら、チョットマとスミソはそう言ったはず。

 相手の所属を示す大きなヒントなのだから。


 見慣れた武装だったから、単に完全武装、と言ったのではないか。




「プリブの件は、一旦、ここで置いておく」

 スジーウォンが何か言いたげな目を向けてきた。

「頭を整理するという意味で、順に話していくよ」



 本来はもうする必要のない話だと思う。

 それもこれも。


 武装のこともそうだが、ライラのことも。



 ライラは何者だったのか。

 これも、それぞれに想像を膨らませているはず。


 しかし、イコマは自分が見落としていたヒントを列挙していこうと思った。

 ライラもそれを望んでいたはずだから。



「結局、決定的証拠なんて皆無。すべては、そう考えれば辻褄が合う、というだけ」

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