182 壮行会
今日、開かれたのは、いわば壮行会。
宇宙船スミヨシを出ていき、再び地上に住むためのミッションの第二段階。
ニューキーツの地下、エリアREFのさらに深く、あらかじめ準備されていた避難所層のさらに深い地底。
そこが人類の生息圏としてふさわしいかどうかの事前調査は既に終えている。
それを踏まえた、移住団第一陣約百名の出発前夜。
団長はレイチェル、副団長はンドペキと決まっている。
スゥやアヤはもちろん家族として同行。
だから、一旦、明日でお別れだ。
第二陣の出発は半年後。
その団長はユウこと三条優。副団長はイコマこと生駒延治。もちろん、チョットマは行動を共にする。
第五陣まであるが、それぞれに指揮官が既に発表されていた。
ニューキーツ東部方面攻撃隊は、これでようやく本当の解体となる。
パリサイドの軍や警察や治安部隊も同様。
このひと月の間に、レイチェルは獅子奮迅の働きをした。
スミヨシに生き残った地球人類とパリサイドの垣根を完全に取り払った新しい社会構造の輪郭。
非常にシンプルだが当面の課題を抜かりなく乗り越えていける実効性のある組織。これらを作り上げていた。
人類の新しい世紀の始まりである。
一年後には、絶えて久しい選挙が行われる予定まである。
それまで、各陣の団長副団長十名を議員とし、プラス五名の参謀、及び各部局の局長八名、合計二十三名の合議によって社会が統べられる。
そこにはトゥルワドゥルー元軍トップ、ミタカライネン元治安省長官、イッジ元警察省長官などを含め、アングレーヌことKC36632やチョットマも名を連ねていた。
イコマの逡巡を見かねたのか、スジーウォンが発案した。
「では、一旦ここで、壮行会はお開きとさせていただきます。引き続き、ニューキーツ東部方面攻撃隊、もとい、ゴミ拾い隊の正式な解団式を執り行います。お忙しいところ恐縮でございますが、関係者の皆さまはそのままここにお残り下さい」
親しい仲間だけに。
そして、かつてそうしたように、推理を披露せよというのだった。
「ノブ、相変わらずやね。人見知りするんやから」
ユウが腕を小突く。
「プリブのことを知らん人がおるやろ。話しづらいで」
やがて部屋に残ったのは、レイチェルとそのSPとして最後まで付き従ったマリーリ。
スジーウォンはじめとするかつての東部方面攻撃隊の面々、かなり数は少なくなった三十数名ばかり。
そしてユウ、アヤ、スゥ、イコマ。
懐かしい顔が揃った。
ここにいないのは、プリブ、亡くなったあるいは姿を消した幾人かの隊員。
そしてライラ。




