表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
175/200

175 まだ、希望はある

 イコマはいてもたってもおれなかった。

 オーエンが時間の猶予をくれたとはいえ、グラン・パラディーゾが暴発すれば、ベータディメンジョンのエネルギーが宇宙を滅ぼす。


 ユウやスタッフは、シャットダウンを試み続けている。

 あるいは、モードの変更。

 こちらの次元からの一方通行にできれば、多少なりとも、人々を向こうの次元に移すことができるかもしれない。

 最悪でも、ゲート通過可能人数のカウンターをゼロに。

 そうすれば、現時点で向こうにいる者は助かる見込みがある。

 しかし、オーエンにシステムを乗っ取られていては、なすすべなしというのが現実。



「ゲートへ行ってくる!」

 ンドペキやチョットマに、こちらに戻って来るなと伝えるために。

 ユウが軽く頷いた。その瞳の中に恐怖がないことを見届け、部屋を出た。


「私も!」

 スジーウォンと一緒に、グラン・パラディーゾの階段を駆け登っていった。

 次々と後に続いてくる者がいるが、そんなことはどうでもいい。


 最上段に登りつめる前に、ゲートから続々と人が出てきた。

 調査隊の帰還が始まっている。

 誰もが急ぎ足で、言葉を交わすわけでもなく、顔色も冴えない。

 ベータディメンジョンの状況は芳しくなかったのだ。



 くそ!


 向こうの状況がどうであれ、こちらの次元に出てきてしまえば、もう戻ることはできない。

 今、グラン・パラディーゾのモードは、ベータディメンジョンからこちらの次元への一方通行。


 チョットマ! ンドペキ! 出てくるな!



 怪訝顔の調査隊の間を縫うようにしてイコマは登った。

 間に合ってくれ!


 まだ、ンドペキともチョットマとも出会っていない。アイーナとも。

 厳密にいえば、こちらのゲートではなく、向こう側のゲートをくぐれば、それで万事休す。

 緩衝地帯のチューブは、こちらの次元にある。

 一旦チューブに出れば、もうこちらの次元に戻ってくるしかない。そういう仕組みだ。



 すれちがう人の流れが途切れた。

 ん?


 ンドペキ、チョットマ、アイーナはいなかった。


 どういうことだ。



 調査隊の最後尾のスタッフに、事情を聴いた。


 チョットマが集合時間に戻らず、ンドペキはチョットマを待つと。

 まだ向こうにいるという。

 アイーナは、パキトポークと共に居残ると言い出し、姿が見えなくなったという。


 ベータディメンジョンから避難してきた市民が十人。

 その人質としてあらかじめ選ばれてあった三人の中に、アイーナ自身が含まれていたのだという。

 驚きました、とスタッフは首を振って、そそくさと階段を降りていった。



 そうか。

 まだ、希望はある。


 しかし、こちらに来るなと、どう伝えればいい。

 なにか、手はないのか!



 ゲートに到達した。

 崩壊が始まっているようで、向こうのゲートが透けて見える。

 人影までは見えないが、緩衝地帯はおぼろにだが見渡すことができる。

 緩衝地帯とはいえ、元々はこの次元の宇宙空間。そこに仮設的に設けられた移動用廊下。

 チューブを通して星が瞬いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ