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174 本当にありがとうございました!

「まさかお前、ここで暮らそうなんて思ってないよな。ニニには会えたのか」

「はい」


 ンドペキが沈んだ声で言う。

「パキトポークには、俺は義理がある。ここに残らなければいけないのなら、それは俺だ」

 ンドペキの腕が伸びてきた。

「分かったか!」

 力づくでも、ゲートに放り込むつもりだ。



「あっ、何をする!」

 ンドペキの叫びを緑色の髪で聞いて、チョットマは、


「ああっ! チョットマ!」


 ゲートの隙間からチューブの中に身を投げ出した。



「本当にありがとうございました!」

「うわ! チョットマ!!」




 重力による支持を失って、身体はバランスを失くし、緩く回りながら徐々にゲートから離れていく。


 ンドペキ……。


 顔がゲートを向いたとき、目が合った。

 何か言わねば。

 しかし、言葉は出てこなかった。

 目をそらした。


 チョットマ! とンドペキが叫び続けてくれている。

 背中を向けたまま、軽く手を振った。


 ンドペキ、さあ、早くゲートをくぐって行って……。




 ゆっくりと流されていく。

 次元を移行する緩衝地帯というべき空間。


 声はまだ聞こえている。

 ということは、まだ空気はある。呼吸もできる。

 でも気温は急速に下がった。

 次元の緩衝地帯として簡易に作られたチューブの中だから。


 どんな構造で作り出されているのか、知らない。

 きっと、なにか硬いもので作られたチューブではない。


 ここだけに作り出された特異な円筒。

 星の瞬く宇宙空間と隔てるものは何もない。


 やがて、くるりくるりと回りながらその境界を超えていく。


 宇宙の只中へ……。

 無慈悲で過酷な世界へ。

 漆黒の闇の世界へ。


 その先は、数秒と持たない命……。



 空を見た。

 瞬く無数の星。パリサイド星。

 見慣れぬ星座……。



 さようなら、パパ……。ンドペキ……。

 本当に、本当に、今まで、ありがとう……。

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