172 まっすぐ走っているのかな
私、ここで暮らしていける?
あの強靭なパキトポークでさえ、痩せ細ってしまうほど過酷な環境……。
食糧難……。
でも、ニニがいるから、やっていけるかな。
いつか、パパやンドペキが迎えに来てくれるまで……。
あ。
また、重力だ。
今度のはきつい。
頭から肩にかけて砂袋を急に背負わされたように、重心を崩した。
前のめりに転んだ。
なんのこれしき!
手の平や膝小僧にできた擦り傷を、ぴしりと叩いて、また駆け出した。
私は東部方面攻撃隊の一員。
これしきのことで!
足手まといの隊員だけど!
ニニの顔を思い出した。
捉えどころのない部分があるニニだけど、今日は素直だった。
顔色は悪いし、この状況に怒ってるみたいだったし、逃げていったみたいなものだけど。
もしや。
急ぐ私を行かせようと、自分から消えたのかもしれなかった。
ニニはあの池の底で、アンジェリナとセオジュンの傍で、ずっと、何年も、ああして蹲っていたんだ……。
何も口にせず、誰とも話さず、眠るように……。
それがどういうことなのか……。
アンドロだから……。
セオジュンもアンジェリナも、あんなふうに……。
いくら使命だからといっても……。
いや、そんなことを考えるのはもうやめよう。
あまり考え込むと、足が遅くなる。
でも、ニニ……。
ほとんど話はできなかった……。
でも、会えたことだけでも満足よね……。
チョットマは自分にそう言い聞かせた。
それにしても!
集合場所はまだなの!
こんなに遠かったかしら。
あ、そうか!
自分の足が遅いのだ!
重力のせいで!
くそう!
ついてこなかったニニを恨む気持ちは全くない。
自分の迂闊さが悪いのだ。
池の底で時計を見ておれば。
いや、あんな装置の中で、時計が正確に動いている保証はない。
時計はパリサイドの技術だとしても、そこまで想定していたかどうか。
ということは……。
今この時刻も正確とは言えないのではないか。
もしや……。
もっと時間が経っている?
あるいは、もっと前?
私たちが来る前とか……。
そんなはずはない。
私はここにいるんだもの。
ああ、それにしても、遠い!
やっぱり私は足手纏い。
情けない!
灰色の世界が続くばかり。
無我夢中で走っていると、平衡感覚がうまく保てない。
前後左右だけでなく、上下さえもあやふやになってくる。
私、まっすぐ走っているのかしら。
でも、もうすぐ!
集合場所!
まだ開いていて!




