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171 パパ……、ごめんなさい……

 それでよかった。

 たちまちチョットマとニニは手を繋いだまま、池の縁に立っていた。

 よし!

 時計を見た。



 えっ!


 そんな!


 針は既に八時二十分を回っていた。



 うわっ!

 池の底にいたのは、わずか数分間のはず。

 それが、どうしたことか、三十分近くいたことになる。


 眩暈を感じた。

 ショックによる眩暈か、時間の流れの変化によるものか。

 大きくを息を吸い込んで、体勢を立て直した。


「ますいよ! これは! ニニ! こっちに来て! 一緒に帰るのよ! 早く!」

 ニニの手を引いて駆け出そうとした。


 しかし、ニニは動こうとしない。


「どうしたの!」

 そればかりか手を放してしまった。

「早く! 戻れなくなっちゃう!」


 改めてニニの顔を見ると、池の底で見た時より、顔色が悪い。

 辺りを驚きを持った目で見ている。

 その瞳には、怒りとも絶望とも見える色が浮かんでいた。

 やはり、ベータディメンジョンの変化を知らなかったのだ。

 しかし、構っている時間はない。



「さあ! 早く!」


 が、ニニは差し出した手を払いのけ、きつい口調で言った。

「私は行かない。戻るって、ホームディメンジョンにでしょ。私の居場所はここだもの」

「だって、ここはもう」

「どういうことになろうと、ここが私の世界。アンドロのいるべきところ。それに、アンジェリナやセオジュンを放っておけないでしょ」

「でも!」

「チョットマ。また、来てね!」

 と、路地に駆け込んでいってしまった。



 やはりそうだった。

 おせっかいだったのだ。


 しかたがない。


 ニニは典型的なアンドロだもの。全てにおいて仕事が優先。

 彼女の仕事は、アンジェリナの友達となること。そして傍にいて見守ること。

 その仕事はまだ終わっていないのだ。


「また、会おうね!」


 ニニの消えた路地に叫んだが、返事はなかった。




 チョットマは走った。

 パキトポークの小屋にはもう誰もいなかった。


 ンドペキに、みんなに、置いていかれた。

 少しは待ってくれていただろうが、こんなに遅れてしまっては。


 集合時間はもうとっくに過ぎている。

 もしかすると、次元のゲートも閉じてしまったかもしれない。


 やばいよ、これは。


 パパに合わせる顔がない。

 それどころか、もう会えないかもしれない!



 絶体絶命!

 叫びながら走った。


 くそ!

 こんな時に!


 重力が襲ってきたが、幸い、さほどのことはない。

 ニニをあそこから出したからかな。

 そんなことで気を紛らわしながら、チョットマは駆けに駆けた。




 クリスタルの破片が散らばるイダーデの廃墟を走り抜け、ここだと思う街角で右折し、集合場所を目指して走る。


 もう、間に合わない……。

 そんな思いが浮かんでくる。


 置き去りにされた……。


 次のミッションは、すぐに始まるのだろうか……。



 パパ……、ごめんなさい……。

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