170 一緒にジャンプするんだよ!
それで、ニニは?
池の底の空間は思いのほか広かった。
上を見ると、水面のさざ波が見える。
ニニはどこに。
チョットマは少し移動した。
また上を見た。
先ほどと同じように、水面が見える。
少し安心して、さらに移動した。
と、ようやく部屋の壁が見えてきた。
半透明の壁だった。
緩やかにカーブしている。
きっと、池の形を底もそのままなぞっているのだろう。
壁の向こうには、大きなエネルギーが流れているようで、様々な色彩の波が高速に揺れ動いていた。
あっ。
チョットマは小さな声を上げた。
視線の先に、黒いものがある。
ニニ!
近づいてみると、まさしくニニが顔を膝に埋めて蹲っていた。
「ニニ!」
ニニが顔を上げた。
「チョットマよ! お久しぶり!」
反応がないのかと思うほど、長い時間をかけてニニが瞼を開けた。
「寝ていたの?」
言ってから、変な挨拶。
とは思ったが、案外それがよかったようで、ニニの目がはっきりとチョットマを捉えた。
そして、あ、と口を開いた。
「チョットマ……」
「そうよ! 会いに来たんだよ!」
積もる話は山ほどある。
しかし、時間はもうない。
戻らなければいけない。
「ニニ! ここから出よう! ここはアンジェリナとセオジュンに任せて!」
「……」
「さあ! 立って!」
ニニがここにいることでカイロスのパワーが落ちているのかもしれない。
もちろん、今言うべきことではない。
「上がるのよ!」
ほっとしたことに、ニニは躊躇することなく、すっくと立ち上がった。
「チョットマ! 嬉しいよ! 来てくれて」
「うん! じゃ、行くよ。いい?」
「うん」
チョットマはニニの手を取った。
冷たいかと思っていたが、思いのほか温かく、柔らかかった。
どうして上昇すればいいのか、分からない。
しかし、きっとジャンプすればいいだけのこと。
「いい? 一緒にジャンプするんだよ! せえの!」




