17 そこだけ伸びる眉毛だって
「ところで」
「今度の任務ね」
「ああ」
新しい任務に就いたのか、ユウはこのところ忙しい。
毎日、帰っては来るが、顔を出すだけ、という日も多い。
「秘密の仕事か?」
軍の任務であれば、口外できるものではないだろう。
夫として、できることなら聞いておきたい気持ちはあるが、遠慮の方が勝る。
「そうねえ。どう説明したらいいかな」
と、ユウは思案顔をする。
ユウのどんな表情も、イコマにとって、宝物。
昔と同じように、ユウの表情がくるくる変わるとき、幸せが満ちてくる。
ああ、この表情は……。
アギであったイコマの記憶は、六百年を経た今でも薄れることはなかった。
あの時もこんな顔してたな……。
ムササビのような、アヒルのような、アザラシのような……。
それが今のユウとオーバーラップし、様々な記憶が実体を伴ったかのように蘇ってくる。
ふと意地悪な気分になった。
「なあ、ユウ。まだ僕の顔、覚えてる?」
「わ! 失礼ね! 当たり前やん!」
「ほんまかいな。おぼろげに、なんて」
「ううん。はっきり覚えてるって!」
ほくろの位置や、髪の生え際の様子や、耳たぶの大きさや、唇の皺に至るまで。
ユウがむきになって言い募るが、どうでもいいこと。単なる遊び。
「わかったわかった」
「いつの間にか、そこだけ伸びる眉毛だって」
「だから、もういいって」
そもそも、自分の顔を取り戻すことができるようになった時、正確に再現できるかどうか、こっちの方が怪しいのだから。
「任務は、ある調査を……」
「まあ、なんだな。大変ってことや。いろいろと」
「まあねえ。またパリサイドの世界観、説明する?」
「ああ。聞きたい」




