16 運動神経がなくて、すまない
それにしても……。
パリサイドによる地球人類救出作戦。
その撤収タイミングは、致し方ない事情もあったようだ。
ユウの言う制限時間というものが何なのか、わからないが。
結局、私たちの誘いに応じなかった人も多いし、探し出せなかった人もいるだろうし。
と、ユウは少しだけ悔しそうな顔をする。
まあ、仕方ないさ。パリサイドは充分なことをしたさ。
うん。ま、私は最大の目的を完璧に達成したしね。
と、うれしそうに表情を一変させるのだった。
イコマとアヤと再会すること。
そのためにユウは、帰還するパリサイドの本隊が地球に舞い降りる前から、海に潜行し、イコマやアヤの行方を追っていたのだった。
約束も果たせたし。
と、抱きついてくる。
新婚夫婦のように、何度も同じことを言って。
ユウとキスするとき、イコマは恥ずかしい思いがする。
パリサイドの身体で、表情の乏しい顔。
長大な腕も、まだ意のままに操れるわけではない。
違和感は否めない。
ぎごちない抱擁。
ユウは決してムードを求める女性ではないが、それでも申し訳ない気がするのだ。
パリサイドの身体を得たスミソは、空を飛べるようになり、水に潜れるようになったが、体を変化させる、つまり、人らしい姿に変身することはまだできない。
爆発的なエネルギーを生み出すこともできないし、広げた翼でエネルギーを得ることもできない。
元々不器用で、しかも六百年も電脳の存在として生きてきたイコマが、そのどれも会得していないのは当然のこと。
すまないな。運動神経がなくて。
なにが?
空は飛べなくていいから、早く自分の身体を取り戻したいよ。せめて顔だけでも。
焦らない、焦らない。私たちがこの身体をそこそこ使いこなせるようになるまで、それこそ何年もかかったんだから。




