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134 あの白い霧

「いよいよ。いよいよね」


 アイーナが感慨深げに目を瞑った。

 座ったソファの肘置きを細い指が握った。


「どういうことなんです?」

「イコマさん、時間はまだゆっくりあるわ。それともお急ぎ?」

「いえ」

「じゃ、順番にお話ししましょう」


 面会時間三分のアイーナは、今日はゆったりとしている。

 グラン・パラディーゾが無事で、ステージフォーを一網打尽にしたのだから、気分も上々なのだろう。

「白い霧、ふふん」と笑った。




 この宇宙船に乗り込んでから気になっていたこともある、あの白い霧。

 その正体がアイーナの口から語られようとしている。

 重要なことなのかどうか、今の自分たちには分からないが、興味はある。

 ンドペキも、スゥも黙ってアイーナを見つめている。

 ユウでさえも。




「私の推測では、笑わないで欲しいんですけど、もっと強力な力が働いたのじゃないかって思うのよ」

「キョー・マチボリーか……」

「いいえ。彼にそんな力はない。それに彼、今はとても衰弱していて、それどころじゃないみたい」

「やっぱり、具合が悪いんですか?」

「思考力がね。情報整理能力、情報収集能力というべきかしら。自分でいることが辛いみたい」

「自分でいる?」


 イコマの反応に、アイーナは急がないでと言わんばかりに、すらりとした指を広げてみせた。

「さっきの話題に戻しますが、いいですか」

「ええ……」

 異存はない。

 キョー・マチボリーが病気であろうと、きっとイコマに関係はない。




「この部屋に今いる皆さんは、奴に汚染されていない。だからこうして」

 アイーナが立ち上がり、チョットマの髪を撫でた。

「私もこの身体でいられる。緑髪のかわいこちゃん。チョットマ、ごめんね。あの時、あなたは汚染されていたのよ。だから念のため、別室で会ってもらった。私もあの不格好な防護服を着ていた」



 チョットマの脳が何者かに侵入されていたことを、アイーナは知っていた。

 どこかのスキャンエリアで判別されていたのだろう。

 そして、チョットマの脳に巣食った者が既に抜けていったことも、お見通しというわけだ。



「そう。私は、以前からあの白い霧が怪しいと思っていた。でも、あの霧の正体は分かっていない。捕まえようにも、捕まえられないから」

 微粒子状でチラチラ光っているだけで、質量を持つ物質ではないのだという。

 捕えた途端に、いかなる痕跡も残さず消えてしまう。


「あれは、強い意志が具現化したもの。神出鬼没。どこにでも出現するし、どこにでも入り込む。人体だろうがサイバー空間であろうが」

 宇宙のはるかかなた、地球にでも、太陽の核の中心部でも。

 オペラ座のアトラクションの中にも、この宇宙船のシステムの中にも。

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