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130 うそうそ。冗談

 たしなめる間もなく、アイーナは幸せを振りまくように笑った。

「いいのよ。かわいこちゃんらしい質問よね」


 アイーナは相変わらず、かわいこちゃんと呼ぶが、彼女はチョットマを一目見た時から気に入っている。

 きっと、この髪もその理由のひとつだったのだろう。

 アイーナの手がすっと伸びて、チョットマの緑色の髪を撫でた。



「教えてあげようか」

「はい」

「市長室の前に、世界中の王子様が行列を作っちゃ、困るでしょ」

「あ、そうか!」

「うそうそ。冗談。そんなに私、自惚れさんじゃないから。本当は、嫌な奴から体を守るため、あの分厚い装備をしていたのよ」

「へえ! あれって、装備だったんですか」

「そうよ。私の肌を連中に晒さないためのね」

「だからあんなに分厚い服を。でも、じゃ、もうその嫌な奴はいなくなった?」

「そうねえ。そう思わない?」



 アイーナはそれをチョットマに言うようでいて、この場の全員に問うているようだった。

「イコマさん。この世界には不思議な意識が存在することをお話ししましたよね」

「ええ」

「私、そういうの、大嫌いなの。許せないのよ。生理的に。背後から人を支配するような」




 その時、来訪者があると連絡があった。


「キャンティが来ました」

「通してください」

「では、この辺で。いつまでもお邪魔していてはいけませんから」

「いえ、お時間が許すなら、皆さん、もうしばらくいらしてください。イコマさん、きっとあなたもお聞きになりたいでしょうお話をしますので」


 アイーナに引き止められて、断る理由はない。



 キャンティ。

 一度だけ、講師を務めたかわいい女の子。

 十五歳にして就職が決まっているという優等生。

 オペラ座のテストプレーヤーをしているということだったし、地球市民の心をたった一度のレクチャーで掴んでしまった彼女。


 しかし、サワンドーレの娘。

 娘に罪はないが、イコマは心がわななくのを感じた。


 サワンドーレめ!

 プリブを語って、アヤを連れ去った男。

 ステージフォーの幹部かどうか知らないが、許せぬ。



「でも、イコマさん。キャンティを責めないでくださいね。アヤさんのことは、彼女には関係ないことですから」

 心を読んだアイーナの念押しに、イコマは思い出した。


 そうだ。

 聞き耳頭巾を届けてくれたのは、キャンティだった。


 しかし、

「当然です」

 とは言いながら、胸に沸き起こった怒りを何とか表情に出さないことに苦労していた。

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