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129/200

129 すべての人の美の基準の最高位

 翌日、家族全員でアイーナに礼を言いに行こうとなった。

 イコマ、ンドペキ、スゥ、アヤ、チョットマの五人。ユウとは向こうで落ち合うことになった。




「すみません。お忙しいところ」

「いいえ。忙しくはありません。JP01がすべてやってくれていますから」


 アイーナに勧められて、いたるところに置かれた猫脚のチェアや、花柄のファブリックソファに腰を落ち着けた。



 アヤを救ってくれた一連の出来事に、イコマは喜びを溢れさせて何度も頭を下げた。


「そんなにお礼を言っていただくと、恥ずかしいわ。かわいこちゃんのお姉さんだというから、少し気にかけていただけ」


 礼を言いながら、イコマの目はアイーナに釘付けになった。

 再び、巨大クッションの体ではなくなっている。

 ダイエットなどと言っていたが、これは次元が違う。



 絶世の美女とは、こういう人を指して言うのだ。



 美の基準は人によって違うが、アイーナはまさにすべての人が持つ美の基準の最高位にあると言えた。

 ふくよかな頬に輝く瞳。

 大人の女性にはなかなか見られない、きれいなピンク色をした形の良い唇。

 その上にすっと盛り上がった真直ぐな鼻の線。

 細面の端正な顔の輪郭を余すことなく見せながら、グラビアのように変えていく表情がどんな人をも惹きつける。

 それに、艶のある緑色の長い髪。

 深い森の中、神秘の湖を思わせるエメラルドグリーン。

 アイーナが頭を動かすたびに、森の小さな妖精達が零れ落ちるように輝いた。



「あら、イコマさん。どこを見てらっしゃるの」

 言葉遣いまでが、違う。

 唯一、これがアイーナだという印は、聞き覚えのあるハスキーな声だけ。


「あ、いえ」

「この髪?」

「え、ま。見事な……」

 まさか、見とれていましたとは言えない。

「チョットマと同じ、緑の」



「全然違うよ!」

 チョットマが腕を引っ張った。

「市長の髪が断然きれい」

「ううん、チョットマ。貴女の髪も、とってもきれいよ」

 アイーナに笑いかけられて、物怖じしないはずのチョットマも、さすがに顔を赤らめた。



「先日も、この髪だったんですけどね」

 アイーナが髪を弄ると、まるでそこから本物の花の香りが目に見えるかのように匂い立つ。


 グラン・パラディーゾの試験運転の日。

 確かに、巨大クッションの体ではなかったが、髪は?

 髪どころではない。顔も記憶に残っていなかった。



「あ、いえ、その、申し訳ありません」

「謝るようことじゃないですよ。きっと皆さん、アヤさんのことで頭が一杯で、周りを見る余裕なんてなかったのでしょうから」

「え、まあ……」


「ノブ。なんか、見てられないよねえ。なに、あがってるん?」

 ユウがにやにやしている。

「なんというか、勝手が違うというか……」

「確かにね。市長がこんなにきれいな人だったとは、知らなかったわ」

「まあ、JP01に褒められるなんて、光栄ね」




「あの、市長」

 チョットマが顔を火照らせたまま、アイーナに聞いた。

「どうして、あの、丸い身体をしてたんですか?」

「おいおい。それはいろいろ事情が」

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