126 人の記憶はいとも容易く奪われ
人の記憶はいとも容易く奪われ、書き換えられてしまう。
アヤはステージフォーという宗教団体に捕まってしまったわけだが、宗教団体でなくとも、パリサイドの世界では普遍的に行われていることなのだろうか。
そういえば、KC36632、アングレーヌが話してくれたことがある。
パリサイドの世界では、記憶や思考の提供者が選ばれていて、子供達にそれを移植していくと。
ユウの経験や知識を持った人もたくさんいるのだと。
移植だけでなく、置き換えてしまうという乱暴な行為は行われていないのだろうか。
つまり、人格支配。
イコマは強い疑問を持ったが、アイーナはそこには触れようとしない。
当然である。
彼女が市長であり、絶大な権力を振るえる、当の本人だから。
「プリブは?」
これはチョットマの質問。
「プリブ?」
「病院からアヤちゃんを連れ去ったのは、プリブってことになってるのよ。父親と名乗ってね。私は信じてないけど」
「そうなの? 知らなかった。私を病院から連れ出したのは、幹部の一人。今にして思えば、あれは、サワンドーレ。私たちの講師」
「えっ、サワンドーレ?」
なるほど、あいつか。
神が一組の男女を探しているとか何とか、そんなことをンドペキに囁いたあいつ。
その男女というのが、アヤと……。
イコマは、腐った臭いのする不快な息吹が耳の中に吹き込まれたような気分になった。
ただでは済まさないからな、と奥歯を噛みしめた。
「教団は次の一手、何か考えてる?」
再びアイーナの質問が始まった。
「いや、その前に、なぜ我々のミッションの邪魔をする? なぜグラン・パラディーゾを破壊しようとした?」
この質問に対しては、アヤの返答は曖昧だった。
「さあ。わかりません。ただ、目的として聞いていたことは、神の国を守るというようなことだけで……」
「神の国ねえ。ああ、もう、つくづく嫌になる。そんな連中と同じ星にいること自体が」
「次の予定は聞いてません。あ、そう、キョー・マチボリー船長をどうにかするようなことは言ってました」
「キョー・マチボリーが標的か……。のんびりしてられないね」
フゥ!と、大げさな溜息をつき、アイーナは帰っていった。
あいつは大丈夫だと思うんだけど、という呟きを残して。




