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124 洗脳が解けて

 アイーナもアヤの話を聞きたいとのことで、地球市民としては特別に、個室が与えられていた。

 それを機会にレイチェルも、特別扱いは嫌だとこれまで拒んできた個室に住まいを移している。



「まあ、そんなことだろうと思ってたけどね」

 アヤの話を聞いたアイーナの感想である。


「見くびっていたのは私の失敗。だけど、所詮は烏合の衆。奴らが考えることは決まっている」

 ステージフォーの輪郭が、アヤの話によって少しだけ明らかになった。




 アヤの洗脳が解けてから、丸一日が経ち、体調は完ぺきとは言えないまでも、ほとんど回復している。

 ミズカワにつけられた傷の方は、もうどこかわからないほど癒えている。


 質問はアイーナに任せて、イコマは黙ってアヤの顔を見つめているだけで満足だった。


 やっと。

 やっとだ。

 これで……。

 よかった……。


 その思いだけで、胸が一杯だった。




 アヤは今、眠っている。

 好きなだけ眠らせてやりたい。

 その間、何があってもそばを離れない。


 アヤの胸に、聞き耳頭巾を掛けてやりながら、また目頭が熱くなってくる。

 チョットマに気づかれぬようにと思ったが、もう遅かった。

 涙がぽたりとベッドに落ち、小さな染みを作った。



 チョットマとふたり、ずいぶん長い間、並んで座っている。

 ンドペキとスゥのことも思った。

 彼らは今、忙しい。

 市民を組織化する必要があるとのことで、東部方面攻撃隊の面々ともどもその準備に走り回っている。

 今さらながら、という気もするが、事態がどう動くか見えない中で、レイチェルも気が気ではないのだろう。

 重い腰を上げたのだった。




 彼らがアヤの両親。

 そういうことにした。


 それはそれで、間違ったとは思っていない。

 むしろ、新らたな気持ちが生まれていることを感じていた。


 彼らは彼らのスタイルでアヤを愛している。

 元はと言えば、イコマとユウの意識を引き継いだ二人。

 別の人格であれば、当然のことながらアヤに対する気持ちや接し方は同一ではない。


 ンドペキとスゥに対する、イコマの今の気持ち。

 いわば、アヤをンドペキとスゥの元へ嫁がせた、そんな感覚とでも言えばいいだろうか。


 そう気づいてからは、イコマは遠慮することなく、アヤを自分の娘だと思うことができたし、人に話して後ろめたさを感じることもなくなった。

 そして、後ろめたく感じてしまっていたこと、それこそが自分のふがいなさだとも思っていた。




 アヤの寝顔を見ながら、彼女の話を思い出す。

 ステージフォー。

 アヤが見たのはその一端でしかないかもしれない。

 しかし、この宇宙船に乗船してから起きた謎めいた出来事の一部を理解するには十分だった。



 例えば。

 地球市民の中で教団に目を付けられた者は数十人ばかりいるが、それぞれ理由があってのこと。

 なんらかの特技とか経験を持つ者。

 例えば、ある方面に秀でた技術者とか。


 そう。

 きっと、プリブも……。


 アヤは言う。

「私がなぜ選ばれたのか、分からない。破壊部隊に入れられたということは、ニューキーツでの戦闘経験が認められたのかも」

 治安省に勤めていた経験の方じゃないか、とイコマは思ったが、どうでもいいこと。

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