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123/200

123 まずいのか? ううん、信じる

「まあまあ、話は後でね!」


 がっくり肩を落としたイコマやンドペキとは違い、ユウはむしろ楽しげな声を出して、アヤを励ましている。

「苦しかったでしょ。もうすぐ全部外せるからね。あと少しの辛抱よ!」



 頭部を覆っていた装甲がすべて取り払われた。

「ふう! どこにも怪我はないようね。大丈夫! アヤちゃん! 大丈夫よ!」

 と、今度は胸の装甲を外そうとしている。


「くそう! 邪悪な者共め! 神の怒りを招くぞ! その汚い手で触るな!」


 アヤが口汚く叫んでいる。

 男達がまた銃口を向けた。

「待て! 敵じゃない!」




「あっ」

 小さな声を上げたのはチョットマだった。


「聞き耳頭巾ね!」

 ユウの声は、いたって楽しげ。


 布は再び鎌首をもたげたかと思うと、するするっとアヤの頭部に巻き付いた。

 男達が後ずさりする。


「ほう!」

 アイーナは興味深げにその様子を見ている。


「頼むぞ」

 イコマは思わず、聞き気味頭巾に囁いた。

「さすがね」

 ユウは手を休めることなく、胸部の金属板を外しかけている。


「なによ! これ! 汚らわしい! 窒息させる気か!」


 アヤの声が聞き耳頭巾を通して聞こえてきたが、やがておとなしくなった。


「さ、これで楽に息ができるでしょ」

 ユウはアヤの肩に取り掛かっている。




「ぐわっ!」

 突然アヤが苦しげな叫び声をあげた。

「アヤ!」

 ユウも驚いて手を止め、聞き耳頭巾の布に触れた。


「わっ!」

「えっ」

「冷たい」

「まずいのか?」

「ううん、信じる」



 アヤが激しく首を振り始めた。

「ぐっ」

「アヤちゃん!」


 ぐっ、ぐっ。


 何度もアヤは苦しそうに声を吐き出した。


 ぐぐっ。


「頭が!」

「アヤちゃん! アヤちゃん!」

「アヤ!」



 ぐはっ!


 はぁ、はぁ……。



 やがてアヤは、がっくりとうな垂れ、布は力を失ったようにはらりと床に落ちた。



「アヤちゃん!」

 ユウの両手がアヤの頬を包んだ。

「アヤちゃん! しっかり!」


 持ち上げたアヤの顔は血の気がなかった。


「しんどかったね。でも、もう大丈夫やで」

 ユウが優しく声を掛けているが、アヤは聞こえていないのか、固く目を閉じている。



「ぼやぼやしてないで、早く装甲を外してあげるんだよ!」

 アイーナに叱咤されて、男達がアヤの体に飛びついた。


「ノブ。アヤちゃんの頭を支えてて!」

「よし」

 ユウがまた肩の装甲を外しにかかる。

「アヤ……、しっかりしてくれ……」

 アヤの顔はほんのり温かかった。



「じゃ、後はかわいこちゃん、任せたわよ。JP01、後で来て。少ししてからでいいから」

 アイーナが立ち去っていく。

 チョットマは、その背中に、ありがとうございました、と頭を下げた。


「アヤ」

「アヤ」

「アヤ」


 三度の呼びかけに、アヤの目が薄く開いた。

「アヤ……」


 唇が動いた。


「お、とう、さん……」

「アヤ!」

「よかった! 気がついたね!」

「ユ、ウ、お、姉さん……。お父さんも……」

「もう大丈夫! よく頑張った!」

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