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12 見損なっちゃダメ

 任務は、ある次元の調査だという。

「J次元じゃない別の次元」

「何のために?」

「移行方法について、調べることになって」

「ほう!」

 そこがどんな次元なのか、とは問わなかった。

 話していいことなら、ユウは「ある次元」などという表現は使わないだろう。



 驚いた。

 異なる次元に移行する計画が、パリサイドにあるということだ。




 しかし、イコマは別のことを聞いた。

 もっとユウを知る「ため」になることを。


「軍の仕事? もっと科学的な、あるいは学術的な組織というか機関の仕事なんじゃないか?」

「ノブが思ってる科学って、どういうもん?」

「アインシュタインとか……」

「ふうん。今、そういう科学者は皆、軍の組織下にあるのよ」

「へえ、そうなのか」

「軍っていっても、武器を構えて何かを攻撃する、そんな仕事をしているわけじゃないのよね」

「ふむ」

「そういう作戦は、過去のこと。もう、ないと言っていいし」

「パリサイドに敵なし?」

「まあね。ついでに言うと、市民の暮らしを守る警察の仕事も、軍の管轄下」




 ユウが立ち上がった。

 もう行くのか。


「ところで」

 と、イコマはプリブの一件を話した。

「なにか、手がかり、ある?」


 ユウが鼻を鳴らす。

「見損なっちゃダメ」

 先刻承知という。

「パリサイドの中では、というか軍の中では、どう扱われてるんだ?」

「さあ、それは」

 管轄も違うから。


「調べられないか? できる範囲でいいから」

「そうねえ……。難しいと思うけど……」

「いや。やっぱりいい。ユウに不利なことになるなら」

「ごめんね」

 ユウがあっさり微笑んだ。

 これ以上、聞くなということだ。




 なんでもユウに頼るのは慎まなくては。

 ニューキーツで恋人を、そしてアヤを特別扱いしたことが、組織内で彼女の重荷になっているかもしれない。

 もう、十分にしてくれているし、今、これ以上にない幸せなのだから。


 イコマはユウの頬に手をやった。

 ユウの手がそれを包み込む。


「でも、こういう事件もあるよ」

 ユウが話題を転がした。関連する話題として。

「どんな?」

 パリサイド中央議会のある女性メンバーが殺されたという。

「しかも、妙なところで」


 殺人なんて事件が、パリサイドの社会にもあるのか。

 そんな疑問を口にする前に、ユウがドアに手をかけた。


「行くか。双戯感謝祭だというのに」

「まあね。明日は戻れないかもしれない。けど、心配しないでね」


「で、その話、続きは?」

「また今度」

 話が尻切れトンボなのは常だが、少々食い下がるのもいつものこと。

「妙なところ? 中央議会?」

「言葉通りやん。偉い女の人が殺されててん。オペラ座で。ブロードウェイの」

「へえ」


 どう? というようにユウが眼を煌めかせた。

「ん?」

 関西イントネーションのことか?


「マスカレード」

 という言葉を残して、ユウはドアを抜けていった。

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