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118/200

118 目は、そのリストに釘づけに

「くそ! これでは」


 アヤを探すどころではない。

 モニター画面では極彩色の光が躍るばかりで、人の姿は判別できない。


「ポイント三六六へ迎え! 途中の扉は破壊してよい!」

 指揮官が叫んでいる。


「敵は目標地点に到達した模様! 何らかの工作を始めていると思われる! 遭遇次第、排除せよ!」

「捕獲は考えるな! 遠慮なくやれ!」

 軍のトップ、トゥルワドゥルーの声が響く。



 ユウがパリサイドの体に戻り、武装を始めた。

「うむう!」

 ンドペキが唸り声を上げた。


 ここにいてはだめだ。

 アヤを救い出すどころか、みすみす殺されてしまう。

 アヤはもとよりパリサイドではない。

 足手纏いになることを避けてこの戦闘に参加していないことを祈るばかりだが、なんの保証もない。


「おい!」

 ンドペキが立ち上がっていた。

 東部方面攻撃隊としての武装はしている。

「俺は行く! じっとしていられるか!」



「許さん! 勝手な行動をするな!」

 司令室の前で警護していた兵が、きさまに許可は出さぬ、と言い放った。


「娘の命がかかってるんだ! 俺を止められるなら止めてみろ!」

「邪魔する気か!」

「あんたらのミッションに興味はない! 大事なのは娘の命!」

 押し通ろうとするンドペキに、兵士が飛びかかった。

「行かさんぞ!」


 ユウが銃を手にした。

「私が」

「えっ」

「あなたはミッションの総責任者です!」

 ンドペキともみ合う兵士の動きに一瞬の隙が生じた。


「あなたは、人として何が最も大切なのか、わかってないわ!」

「そういうことだ!」

 ンドペキが兵士の腕を逃れ、駆けだした。


「行くぞ!」


「ちっ、余計なことを!」

 それでも、警護隊の隊長は数人の兵士に後を追わせた。

「JP01を守れ!」

「ノブ! しばらくそこにいて! 何かあれば連絡して!」

 と叫ぶユウの声は、もう遠くなっていた。




 イコマも思った。

 自分がここにいても、何もできない。


 ここでアイーナとモニターを見つめていたところで、アヤを救えるわけでもない。

 むしろ、宇宙船の中を歩き回っている方がまだましだ。

 あるいは、チョットマと一緒にいる方が。

 きっと、いてもたってもいられないはず。

 戦闘に参加しようとするかもしれない。



「JP01の言うとおりだよ」

 イコマの心を読んだのだろう。

 アイーナが言った。

「あんた、娘を探してるんだろ。ステージフォーに拉致された娘を。それならここにいることだね」

「なぜだ」

「そのうち、分かることもあるってこと。さ、座って」




「なんだ!」

 兵士が叫んでいる。

「敵の本隊か!」

「ちきしょう! まだいやがったか!」

「落ち着け!」

 グラン・パラディーゾのデッキに波が押し寄せるように、百人ばかりの敵が出現していた。


「兵の絶対数が足りません!」

「くそ! 間に合わないか! 二十秒後! 敵が到達する見込み! デッキ北東部に集中しろ!」

「了解!」

「持ちこたえろ! 二分後には予備隊を送る!」

 じりじりする二十秒だった。



「トゥルワドゥルーのぼんくらめ! いったい、どこに予備隊を集めてたんだい! どいつもこいつも!」

 たちまち光線に埋め尽くされたモニターに向かって、アイーナが毒づいた。



 モニターは十五の画面に分割され、それぞれの戦況を映し出している。

「モードを変えろ!」


 モニターから発せられる光が消えた。

 光の渦は透化され、視界は暗いが兵士達の姿が影として映し出された。


「うむう」


 劣勢は明らか。

 兵数が全く違う。


 しかも、こちらは遮るもののない甲板上で応戦せざるを得ない。

 どの出入り口から飛び出すか、その選択は敵の権利。

 格好の標的だ。


 一人二人と、味方が倒れていく。

「持ちこたえろ!」



「特定化準備完了! 表示しますか?」

 係員が叫んだ。

「不要だ!」

 と叫んだ指揮官に向かって、アイーナが怒鳴り上げた。

 何を言ってるんだい!

 しかし、こちらの声は向こうには届かない。


「入れろ!」

 トゥルワドゥルーの声がした。


 当然だろ!

「了解!」



 モニター画面の右端に、人名らしきものが並び始めた。

 目は、そのリストに釘づけになった。

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