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110 手持無沙汰

「やれやれ」

 そんな独り言だけが口から出てきて、イコマは自分を戒めた。

 前向きに、緊張感を絶やさずに、だ。


 ふと横を見ると、ライラと目があった。

 ホトキンはそこらをぶらついているのだろう。

 姿が見えないことが多い。

 ライラにぷいと目をそらされて、イコマはまた、やれやれと独り言ちた。



 手持無沙汰。

 なんの持ち物もない身。

 居場所を決めたものの、印となるようなものもない。

 広間は各層に様々な広さで構成されている。

 すし詰め状態で座れば最大百五十万人ほども収容できるとあって、人々は互いに声が聞こえない程度の距離を取り、疎らに座を得ている。


 最も大きな部屋、広間という概念からかけ離れた、巨大なアリーナを五つぶち抜いたような部屋。

 レイチェルを取り囲むように、攻撃隊の面々が陣取り、それに接してイコマやライラ夫婦が座り込んでいる。

 ンドペキとスゥのペアもすぐ近くだ。

 チョットマは、この際だから、とイコマと同じ場所で寝起きしている。



 彼女が悩んでいることを知っている。

 ひとりで、デッキに出ていくことも多い。

 ウイルスの声を聴いたりもしているのだろう。話もしているのだろう。


 不安はあるが、その理由は詮索しない。

 自分が何の役にも立っていない、などと考えてもいるのだろう。

 ウイルスとコンタクトすることによって、何らかの知識を得ようともしているのだろう。

 相変わらずライラとは話しているようだが、イコマ自身、この状況下で、どんな助言もできそうになかった。




 アングレーヌが訪ねてきた。

「JP01の代理で来ました」


 言われなくてもわかっている。相変わらず、ユウは戻ってこない。

 アングレーヌはユウからの伝言だけでなく、四方山話もしていく。

 ほとんどがミッションについてだが。

 その内容は難しい。


 例えば。

 ベータディメンジョンへの扉を開くための基本的な仕組みはわかっているが、それをこの宇宙船において実現するときの制約について。

 そもそも向こうの次元のどこに出るのが都合がいいのか、ピンポイントでどこに扉のフォーカスを当てればいいのか。

 扉の大きさ、性能と、消費エネルギーの関係。

 逆流する可能性のあるベータディメンジョンのエネルギー制御について。

 ゲート通過による肉体的影響。特に、パリサイドと地球人類の身体におけるダメージの違い。

 カイロスの仕組みについて、現時点で分かっていること。

 などなど。


 パリサイドが考えている次元の扉の生成方法や、システムの中身については語ろうとしない。

 機密に関することなのだろう。

 もっとも、これ以上詳しい話を聞いても、理解ができるはずもない。



 しかし、今日の用件は違った。

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