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1 あいつら、何も言わないのよ!

「パパ! 大変!」

 こんな風にチョットマが駆け込んでくるのは、これで三度目。

 最初はサリがいなくなったといって。

 二度目はセオジュンの姿が見えないと。


「そんなに慌てて」

「プリブが!」

 と勢い込む横から、スミソが顔をのぞかせた。

 チョットマはパリサイドの世界でよく見かける簡素な服装だが、スミソは武器を携帯している。


 ここはパリサイド宇宙船団の母船。

 狭い船室。イコマの部屋である。

 パリサイドの身体を得て、下着の一枚さえ持たないイコマにとって、ベッドとテーブルと数脚のチェアさえあれば、事足りる。



 チョットマは顔を紅潮させていた。

「さあてと」

 わざと悠長な声を出して、イコマは自分用の椅子に座った。

 スミソは常に変わらぬ冷静沈着さで、いつものようにチョットマに付き従うように立っている。



「とんでもないのよ!」

「なにが?」

「逮捕されたのよ!」

「えっ」

「ひどすぎる!」


 先刻、二人のパリサイドが現れ、プリブを連行していったという。

「ありえないでしょ!」

「理由は?」

「あいつら、何も言わないのよ!」

「うーむ」




 不安が湧き上がってくる。

 このところ、母船を覆う、得体のしれないかすかな不安。


 太陽フレアの襲撃から逃れた人々、アンドロ達、そしてパリサイドとなったアギは、地球各地から全員がこの船に集結している。

 母船名は「スミヨシ」

 ニューキーツ市民が乗りこんだ「あけぼの丸」を含め、すべてのシップもスミヨシ内に格納された。


 市民の数、最終的に約十八万人。

 過半数とはならないが、ニューキーツからの避難民が八万人。

 結局、真正の人ホメムはレイチェルただひとり。


 まだ何百万、何千万の命が地球上に残されているだろうが、パリサイドは地下深くに潜った彼ら全員の救出は断念したようだ。

 いわば見捨てたことに、漠然とした不満を持った者も少なくない。

 イコマもその一人だが、ユウによれば、やむなし、ということになる。

「こっちにも制限時間ってものがあるんだから」

 棘のある言い方だと思ったのか、

「進んで乗り込んでくれる人たちじゃないから」と、申し訳なさそうに言い添えたものだ。


 まだ何百万、何千万の命が地球上に残されているだろうが、パリサイドは地下深くに潜った彼ら全員の救出は断念したようだ。

 いわば見捨てたことに、漠然とした不満を持った者も少なくない。

 イコマもその一人だが、ユウによれば、やむなし、ということになる。

「こっちにも制限時間ってものがあるんだから」

 棘のある言い方だと思ったのか、

「進んで乗り込んでくれる人たちじゃないから」と、申し訳なさそうに言い添えたものだ。




「逮捕ねえ」

 令状は? などと聞いても、意味はない。

 イコマはじめ、パリサイド社会の仕組みはまだ誰も全く知らない。

「公式な……」

 それでも思わず口から出た言葉に、チョットマとスミソも顔を見合わせるばかりだった。


「目の前で連れ去られたのです」

 スミソが申し訳なさそうに付け加えた。

「向こうは完全武装してましたし、こっちはその時……」


 引き立てられていくのを追いすがっても、結局は黙って見送るしかなかったという。

 スミソは表情を変えない男だが、この時ばかりは武器をガチャリといわせた。

○○○○○○作者からのお知らせ




この物語は、

前々作 ニューキーツ ------(美少女戦士 膝を抱えての段):トゥシー・イントゥ・ザ・ヒューチャー第1話(完結)

なろうNO N8460J

前作サントノーレ ------(美少女戦士 翼に包まれての段):トゥシー・イントゥ・ザ・ヒューチャー第2話(完結)

なろうNO N7425BM

からの続きです。


すでにお読みくださった読者の皆様は、このページ(下記の説明)はスルーして、第一章に進んでください。




■前々作、前作をお読みでなく、この編からお読みくださる皆様へ。


このパリサイドは、前々作、前作をお読みくださっているものとして書いております。

この物語も、一つの物語としてお楽しみいただけるものと思っていますが、その背景となる部分は、テンポの都合で、特別な部分を除き、ほとんど表現していません。

できましたら、前々作、前作からお読みくださるとうれしいです。



■前々作、前作を《かなり以前に》お読みくださった方のために、前作までのあらすじと少々の解説を掲載させていただきました。

そんなことがあったなあ、という感じで以下をお読みくださいませ。





●ごくごく短いあらすじ(この物語の背景)


※ご注意ください

以下の解説は、ミステリー小説の形をとっている前々作、前作の完全なネタバレになります。



27世紀、地球の人口は減りに減り、地球上にある街は63までになった。

その一つ、アメリカ大陸にある小都市ニューキーツ。

東部方面攻撃隊の面々が、地球に来訪したパリサイドや人類の生存を支えてきた人造人間アンドロに対峙していた。


パリサイドとは、かつて宇宙に飛び立った神の国巡礼教団解体後の組織。

人類が太刀打ちできない技術を伴って地球に帰還してきたが、その要求は、ともに地球で暮らすこと。

宇宙空間を自由に飛び回り強大なエネルギーを秘めた、黒い、アシカのような肉体。中には姿かたちを自由に変えることのできる者もいる。

その中に、主人公イコマの最愛の人、ユウがいた。


そのころ、若き美貌の長官レイチェルは廃棄された巨大ハドロンゴライダー・エーエージエスに幽閉され、政府ではアンドロ、タールツーが暫定長官を名乗っていた。

東部方面攻撃隊はレイチェルを救い出したものの、反レイチェル派のアンドロから送られてきたクローン、サリによって刺され、地下の激流に消えた。



アンドロに支配されたニューキーツ政府を取り戻すため、地下洞窟から地下スラム街エリアREFに移動したンドペキ率いる東部方面攻撃隊。

散発的に起きるアンドロとの戦闘。


レイチェルの死を秘匿し続ける東部方面攻撃隊は、エリアREFの市長からの依頼を断り切れず、カイロスの刃なる宝物を手に入れるため、スジーウォンとスミソをユーラシア大陸北部の村、ロア・サントノーレに向かわせた。


レイチェル騎士団と同流を果たし、政府建物に侵攻を開始したその時、極大化した太陽フレアが地球を襲った。

人々が地下深くの避難居住区に殺到する中、大昔の科学者カイロスが開発したある装置が起動される。

しかし、その装置の起動は不完全だった。地球は太陽フレアから守られず、地表はもう人が住むことができない。すべての電力は落ちた。


そんな事態を見越して、カイロスはもう一つの装置をアンドロ次元に用意していた。次元の莫大なエネルギーを制御し人が住める環境に整える装置。

そこへ殺到する人並みに抗えず、東部方面攻撃隊の主要なメンバーもアンドロ次元に押し流されていく。


装置を動かすキーとなるアンジェリナ。彼女に恋するセオジュン。彼らを友と慕うニニ。

パキトポークら数名の隊員を残し、ニューキーツに戻ってきたンドペキを迎えたのは、累々と続くアンドロの焼死体だった。



パリサイドが地球に帰還した目的。

故郷の星で暮らしたいという純粋な気持ちからだったが、もう一つの目的もあった。

それは地球が太陽フレアに襲われることを予測し、人類の避難先になること。


生きて戻ってきたレイチェル。

元々、パリサイドに友好的だった彼女の決断。

ニューキーツの市民はパリサイドの申し入れを受け、宇宙船に乗り込んだ。



ニューキーツ長官レイチェルとは。

彼女はホメム。つまり人造的な要素のない生粋の人類。


明らかにされた彼女の秘密。

彼女自身が、アンドロのものとなったニューキーツ暫定長官を名乗ったタールツー、その人であった。

アンドロのタールツーを解体処分し、タールツーになりすましたホメム、キャリー。

彼女は、真性人類の子孫を残すため、アンドロのように時を遡り、レイチェルとしてニューキーツに戻ってきたのだった。

そして恋人探しの人形として二体のクローンを作り、街に放った。

それが、東部方面攻撃隊に入隊したチョットマと、後にレイチェルを刺したサリである。

その人形から情報を得て、レイチェルは攻撃隊の隊長ンドペキに恋心を抱き……。

物語は動き始め、謎が謎を呼んだのであった。

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