嫉妬ブレイクファスト
「朝食の準備が出来ましたので、迎えに来ました」
そう言って俺の部屋まで迎えに来てくれたのは昨日自室まで案内してくれた騎士だ。自室と言っても、一日限りだったが。
「朝からありがとうございます」
と返して、鏡を見て髪の乱れが無いかチェックしておく。もともと癖毛気味だからあまり問題は無いがな。
「騎士で女性って珍しいんですかね?」
廊下を騎士と歩いている最中、そんな事を聞いてみた。騎士の性別が女性だと分かったからだ。
「いえ、ルデラ様の護衛に配属されている騎士は皆、女性ですよ」
あの王、変態かよ。幾ら何でも女性に囲まれ過ぎだ。いや、王という立場を利用してハーレムを作り上げたに違いない。何処までも利己的な王だ。
結構な時間歩くと、食堂に着いた。食堂に入ると、バイキング形式らしく、様々な料理がテーブルに並べられていた。オムレツ、パスタっぽい物など、見たことがある料理も並べられている。
食堂の中を見渡すと、髪の色が皆それぞれカラフルな美少女に囲まれて柔かな微笑みを浮かべながらブレイクファストを楽しんでいる如月が一番目立っていた。一日でこれほどの少女を手に掛けるなんて、酷い男だ。
次に昨日の俺達を召喚したという金髪の美少女リラが食事をとっているのを見つけた。フレンチトーストのような者を頬張っている。小動物のような可愛さが彼女にはあった。守ってあげたい、みたいな感じだ。
なんと、リラの横には宗谷がいた。しかも彼女と会話しながら朝食を楽しんでいるでは無いか。食は細い様だが、リラのフレンチトーストを半分こにして食べている。どう見ても二人はラブラブだ。
どうして俺を除いて二人は朝から美少女と朝食をとっているのだろうか。如月はともかく、宗谷はおかしい。きっとリラが宗谷に同情したんだ。うん、違いない。
そう自分に言い聞かせていたら、なんだか余計に腹が立ってきたので誰も座っていない席に座り、フランスパンもどきを手にとって、豪快に被り付いた。が、予想外にフランスパンもどきは硬く、喉に詰まって少しむせてしまった。味は完全にフランスパンそのものだ。
「朝からどうやらご立腹のようですな」
そう言ってやって来たのはルデラだ。彼もまた椅子にどかっと座って、ハンバーグもどきを綺麗に切り分けている。
「いつからこの城を出るおつもりで?」
「朝食が終わったら、直ぐに発ちたいと思っています」
「そうですか、ならこれを」
そう言ってルデラは人目から隠すように握りこぶしを作って俺の膝の上までのばした。俺は少し怪訝に思ったが、握りこぶしの下に手のひらを置いた。
すると、静かなチンという金属音が聞こえた。手のひらを見ると金色の円形の物が三つ、どう見ても金貨だ。
「これは……?」
「価値は秘密ですよ」
ルデラは含み笑いをした後、ハンバーグを口に入れた。
俺は釈然としない、もやもやした気持ちのまま、ティーカップに入っている白いさらさらとした液体を一気に飲み干した。
それはサラダのソースだった。思わず仰け反って、むせ返る。ルデラは俺を指差し大笑いをしていたのだった。