決意の朝
俺は何故だか知らないが、中学生の頃の格好になっていた。
この頃は周りに優秀な友人が揃っていたなと思い出していた。
俺は昔から、勉強、スポーツ、外見のような人間の主な要素が必ず誰かに負けていた。勉強ではどれほど努力しても良くて三番手、スポーツもどちらかと言えば上手いという程度、外見も自他共に認める地味な顔付きだった。
中学三年くらいだっただろうか。俺は自分が誰にも注目されないという事がとてつもないコンプレックスになっていた。
そこで、俺はそれ以外の面で一番になろうとした。ある時はゲーム、またある時は一分野の知識量で、といったように。
しかし、それでも自分より上に立つ人間がいると知った時、俺は絶望した。所詮、自分はモブのような存在に甘んじるしか無いのかと。この時から、俺の中の大切な物が抜け落ちていくのを感じていた。それを止めようともしなかった。
勉強意欲も失い、まずまずの偏差値ゆぬ高校に俺は入学した。高校ではもともと地味だった自分の全てに更に磨きがかかり、正にモブキャラのような存在になっているのを第三者目線から見ている俺が居た。
友人もいる、勉強も平均よりは賢い、スポーツもある程度できる。しかし、それが何だと言うのだろうか。俺は教室の遠くから今を輝いて生きる如月達通称リア充と呼ばれる者を羨ましそうに眺めるだけになってしまった。
明らかに、俺は現実に対して無感情、無関心になっていた。植物のような生活を送っていた。何故もう一回現状を打破するような気力が湧かなかったのだろうか。今となっては後悔するしかなかった。
周囲が白い光に覆われ、俺は体をベットから起こす。妙な悪夢を見ている内に朝になったらしい。
窓から見える周囲のレンガ造りの家が、ここは俺の良く知る世界では無いと教えてくれた。
何と無く『翼を生やす』魔法を使ってみる。今の俺には如月や宗谷に比べると微力だが、確かに以前より力があるのだ。もう前の世界の俺のように誰かを下から眺める様な存在にはなりたくない。
もしも、無事元の世界に戻れたら、今度こそ誰にも負けない様に努力をしてみよう。そう思うと何故だか力が湧いてくるような気がした。