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無意識に触手プレイ

他の二人も魔法を行使できたようだ。

如月は背中から光り輝く六枚の翼が広がっていた。如月の端正な顔つきと光る翼が揃って、悔しいが様になっている。


「やはり、勇者様は貴方でしたか!」


ルデラは喜んだ様子でそう言った。やはり、ということはルデラは勘付いていたんだろう。俺の『影に入り込む』力と如月の『光り輝く翼』の力。この力の違いに勇者と、勇者で無い者の見分けることのできる理由があるはずだ。


宗谷の方はと言うと、彼の四つん這いになっている体の影が蠢いていた。宗谷は顔に恍惚の表情を浮かべている。正直少し気持ち悪い。影は次第に床を侵食しながら、俺と如月の方に進んでいる様だった。


「勇者様、お逃げください!」


ルデラはそう叫んだ後、騎士達に何かのサインを出した。騎士達は宗谷を取り囲む様に位置を変える。俺は逃げなくても関係ないのかよと思いつつ、宗谷から距離をとる。


刹那、騎士の足元を潜り抜け、影が俺目掛けて一直線に伸びてくる。影は立体状に姿を変えた後、植物のツルの様に体に絡みつく。強烈な力で宗谷のいる方向に引き込まれる。宗谷を見て俺はギョッとした。宗谷の瞳の光彩が完全に消えていたからだ。


ふと、先程俺の頭に浮かんだ情報、影に入り込むことができるということを思い出した。右腕から『何か』を出した時の様に、次は体全体から空気を抜いていく様に『何か』を出していく。


次の瞬間に、俺の体は端の方から黒くなっていく。光さえ通さない様な黒だった。


俺は体に絡みついていた影の力が無くなるのを感じると、宗谷の体の下まで進み、ビンタを食らわせた。


無言のまま、重力に体を任せるように宗谷は倒れこんだ。目は閉じている。俺は宗谷の影から這い出ると、ルデラを睨み付けた。


「これは、どういうことですか?」


ルデラは肩を竦め、やれやれといった様子で語り始めた。


「今のこの少年の状況は、魔力暴走といったものです。魔法を使ったこともろくに無いのに最初から力を出し過ぎたのでしょう」


ルデラは宗谷を騎士達に手厚く介護するように、と指示を出してから話を続けた。


「しかし、今ので一番左の少年は『光』を従える勇者様とは対となる、『闇』を行使する者だと分かりましたな。彼にはその内この国を出て行って貰わねばなりませんな」


そう言ってルデラは部屋の端で倒れこみ、騎士に囲まれてよく分からない緑の液体を飲まされている宗谷を睨んだ。


「彼は我が国に不利益になりますので。ところで貴方の魔法はなんですかな?」


ルデラは俺に微笑みかける。いくら宗谷と言えども彼を侮辱し、自分の利益しか考えず、理不尽に俺達をこのよく分からない場所に連れ込んだルデラに俺は怒りで奴に飛び掛かりそうになるが、「相手は国の王だぞ」と叱責して、答えた。


「……影に入り込む力です」


ルデラは鼻で軽く笑い、馬鹿にしたような表情で言った。


「それはあり得ませんな、勇者様と共に複数人でこちらの『世界』に転移にしてきたことがありますが、そのような時は皆が違う系統の魔法を行使できると文献にはあります。貴方は恐らく、光でも、闇でも、どちらでもない魔法を使えるはずです」


つまり『影に入り込む』力は俺の使える魔法の本質では無い、ということだ。


そして俺は「こちらの『世界』」とルデラが言ったことから、ここが俗に言う異世界ということが分かった。さっきまで半信半疑だったが。


ルデラは利益しか考えないようだから、俺の能力を見極めて使えるか判断するつもりなのだろう。ルデラの言う通りにするのは癪だが。


俺としても自分の魔法を知っておきたかったので、さっきから此方をニヤニヤして、高みの見物をしている如月に右手を向けた。

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