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一章
ーー何でこんなことになったんだっけ?
朦朧とする意識の中で、俺は自分に問い掛けた。目の前には何体もの死体が転がっている。もう間も無く、俺もその中の一人になるのだ。
するすると、衣擦れの音が聞こえる。気持ち悪いほど静かにその時はやって来る。
フードを被った黒ずくめの男が、こちらにゆっくりと近づきながら、口の端を上げて不敵な笑みを浮かべていた。
ーーやっぱり俺が言った通りだったろ?
呼吸すらまともに出来ないような状況下で、俺は憤りを感じていた。もう居ない奴に怒ったって、意味がないことは理解している。
何故俺を信じたんだ。何故いなくなったんだーーバカやろう。
言葉では言い表せない感情が、生暖かい滴となって頬を次々と伝った。俺が出来ることは、もう何もない。覚悟を決めて、俺は目を閉じた。