真実と欺瞞
初投稿です。何かと至らない点はあると思うのですが、よろしくお願いします。
これはとある、物語。
その世界には2つの国がありました。1つは、真実の国。1つは、欺瞞の国。それぞれはその名のとおり真実しか言わない国と、欺瞞にまみれた国。お互いは「自分の国以外にも国がある」ということだけは知っていましたが、まさかその国が自分たちと全く正反対だとは気づいていませんでした。
ある日のこと、真実の国に住む少女と欺瞞の国に住む少年が出会いました。
「貴方はどちらの国から来たの?」と、少女は尋ねました。
「僕は真実の国から来たんだ」少年は答えました。
少女は真実の国の住人ですから当然それを信じます。
「本当に?私も真実の国から来たの!」少女は身体が弱く、同じ国の人でさえ、あまり話したことはなかったので、初めてお話できたこと、…まして同じ年位の少年と出会えたことに感激しました。
しかし、少年は。
少年は欺瞞の国の住人ですから
少女の言った真実の国→欺瞞の国だなと判断してしまいました。少年の方も、人との関わりが苦手でこんなに嬉しそうに話しかけてくる少女と出会えたことに何とも言えない気持ちを覚えました。
しばらく2人は他愛のない話をして過ごし、そしていつしかそれが日課になりました。
月日は流れ、少女の体調は日に日に悪くなっていきます。でも少年と過ごす時間を大切にしたくて無理をしてでもいつもの場所で待ち合わせます。何よりも少年が大事だったからです。一方少年も、少女のおかげで人という存在にうまく意思を伝えられるようになっていきました。
少年はある日、ついに少女に思いを伝えようと決意しました。
「僕は貴女が…」
この日の為に何回も何回も練習しました。でも、…でも彼は、欺瞞の国の少年でした。
「僕は貴女が大嫌いです」
少女はその言葉を聞いて、悲しくなりました。少女の方も、彼が大好きでしたから。
少女の大きな瞳から自然と涙が零れ落ち、その唇からか細く言葉が紡がれました。
「私は……例え貴方が私を嫌いでも、私は貴方が大好きだったよ」そう言って少女はその場を立ち去りました。
少女の言葉に少年は悲しくなりました。勇気をもって告白したのに、まさか自分が嫌われていたなんて。
それでも少年はしばらくいつもの場所で彼女を待ち続けました。いつか少女が自分をみてくれるまで、頑張ってみようとおもったのです。例え自分を好きになってくれないとしても、少女を好きなことには変わりないから…。しかしいつまで待っても少女はやってきませんでした。
また時は流れ、風の噂であちらの国の少女が1人亡くなったと聞きました。少年はまさか彼女ではないかと焦りました。でも、少年は少女が自分と同じ国だと言っていたことを思い出しました。安心したさなか、少年の祈りは届かず、亡くなったのは間違いなく彼女であることがわかりました。
ずっと好きだった少年に嫌いだと言われ、少女は傷つきました。泣き続け、そしてもっと病気を拗らせてしまったのです。
少女が死ぬ間際、走馬灯のように少年と過ごした日々を思い出しました。とても嬉しかったこと、共になやんだこと、笑ったこと、…泣いたこと。
そして最後に、好きだと、伝えたこと。嫌われていたと知っても、少女の気持ちは変わらず少年にありました。
「ありがとう」
少女は静かに息をひきとりました。
一方、少年は悲しみ続けました。まさか、こんなことになるなんて。少年はとても素直な子どもでした。生まれてこの方、ウソなどついたこともありませんでした。(もちろん、彼は欺瞞の国の少年ですが、その中で、ウソをつかないということです)
少女が亡くなってしばらくがすぎました。しかし少年の心はいまだに彼女にありました。こんなことになるのなら、いっそ彼女を忘れてしまえたらいいのに。
そもそも、どうして彼女は僕に嘘をついたんだろう。どうしてあっちの国の生まれだって、教えてくれなかったのだろう?
とある日、少年は衝撃的な内容を聞かされました。
“向こうの国は、自分たちと正反対”?
まさか、そんな。でもそのことで少年は少女との食い違いにも合点がつきました。
彼女は真実の国の住人だといった。それこそが真実だったんだ!
ということは…
「僕は貴女が大嫌いです」
少年は自分を責めました。なんてひどいことを言ってしまったんだろう。…そして、彼女も僕を、…好きだと言ってくれたんだ、…こんな、僕を…。
少年の瞳から涙が零れました。しばらく静寂の中で、少年は考えて考えて、そして呟きました。
「君に伝える…よ、僕は君が、大好き、です」
少年は彼女の為に、初めてウソをつきました。
fin.