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プロローグ

この物語はフィクションであり、実在の人物及び団体とは一切関係ありません

 事実は小説より奇なりとはよく言ったものである。不思議というものは意外なほど簡単に転がっているものである。

 と、我が義妹と対面しながらたった二人の食卓を営んでいるところである。

 俺は、犬飼猛。妹の名前は望である。近所の高校に通うちょっと変わった兄妹とでも言っておこう。

 よく気が回るし、料理も上手で家事もマメというよくできた妹である。身内の贔屓目を差し引いたとしても、かなり可愛い女の子と誇れるだろう。平均から程よく小さい身長は可愛らしさを助長させているし、ぱっちりとした目元に柔らかそうな唇は魅力的だろう。長い髪を二つの尻尾にみたて、左右対称にまとめたツインテールは快活な妹によくあった髪形だと思う。ただし、多少胸は小さいが。

 ところで妹には、一目で見て分かる特異点がある。それは、頭の両側にある人ならざる耳であった。獣耳とでも言えばいいのだろうか、犬耳と表現するのが適切なのだろうか。ともかく、その辺りはその筋に精通した人間が答えるべきだろう。


「どう、お兄ちゃん? 今日の晩御飯はちょっと自信があるんだけど……」

「あぁ、おいしいよ」


 そんな月並みの返事をしつつ、説明を続けよう。

 この世界には、ひっそりと暮らす異形の人間が存在する。知識ある人間からは異人と呼ばれているそうだ。あまり世間には周知されていないのはその血が段々と薄まってきている傾向があるからだ。

 我が妹も、月が満ちる三日前後くらいの夜にしかこの症状は発生しないのだ。今日はちょうどその満月の日であった。

 一般的に伝説として扱われている異人も実際にいるんだと、考古学者の父は語っていた。そんな父に育てられた俺は、こうして妹のちょっと変わった姿も何の抵抗もなく受け入れられた。そもそも、この娘を連れてきたのは父だが。


「今日は日曜日だからいいけど、明日からは平日なんだから気をつけろよ」

「ん、りょーかいですよ」


 理解をしてくれる人は少なからずいるだろうが、一般から見たら気味が悪いだろう。まぁ、中にはこういうのが好みのマニアックな方もいるだろうが、そればっかりではないからな。


「家にはまっすぐ帰って来いよ。暗くなったあとに、何か欲しいものがあれば俺が買ってきてやるからな」

「うん、いつもありがとうね」

「いや、感謝を言うのはこっちさ、家事とかほとんど押し付けちゃってるからな」

「それでも、こうして普通に暮らせてられるのはお兄ちゃんのおかげなんだよ?」

「はは、そこまで大げさに言わなくていいさ」


 こうして、些細なことにもいちいちお礼を言ってくれる。本当にできていた妹だよまったく。


「あっ、そうそうお兄ちゃん。明日から転校生が来るらしいよ?」

「転校生、どうしてまたこんなタイミングに?」


 もうすでに、4月の第一週が終わってしまう日付。始業式、入学式と学校のスケジュールが着々と進められて、新しいクラスでも交流の輪が形成されていてもおかしくない。


「私達と同じ学年みたいだけど、どんな人なんだろうね?」

「さぁな、どうせそんな関わり合いになることだってないさ」


 このときはまだ対岸の火事だろうと傍観を決め込んでいたが、世の中そう上手にいかないものである。

 事実は小説より奇なりという言葉の重みを実感することとなったのだ。

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