夢
「なんだと!?」
いち早くその言葉に反応したのはおじいさんだった。
「どういうことじゃ、説明しろ」
喰いついてきたおじいさんに頷いてからハルは話し始めた。
「そう、なんだ」
ハルが話し終わってから私たちを沈黙が支配した。
その沈黙に耐えかねた私が発した言葉がこれだ。
そのとき、ハルをよぶ声が聞こえた。
「あ、母さまが呼んでる…。ぼく、もう行かなくちゃ」
そうい言うとハルは部屋をあとにした。
ハルが出て行ったあと、さらに私たちは沈黙に支配された。
そして
「わしも、もう行く」
と、おじいさんも立ち上がった。
「ゆっくりしていきなさい」
そう言い残して部屋を出て行った。
残された私たち二人は、しばらく微動だにしなかった。
と、突然レンが立ち上がった。
「散歩に行ってくる。先に寝とけよ」
これだけ言うと足早に出て行った。
最後の最後まで残った私は、とくにやることもなかったので、ベットに横になった。
そうしてるうちに、意識は眠りのなかへと引きずり込まれていった。
「さすがだ。やはり、お前は私の自慢の娘だ。」
そう言って頭を撫でてくれる手は、大きくて温かかった。
「本当。すごいわ」
今度は、真っ白で細い指が髪をすく。
思わず私は口走っていた。
「おとうさん、おかあさん!」
少し舌足らずな言葉で呼ぶと二人とも微笑んだ気がした。
気がしたというのは、実は二人の顔はぼやけていてはっきりしない。
きっと私が覚えていないから。
「かわいい私たちの愛しい子」
そう言いながらおかあさんはぎゅっと抱きしめてくれた。
でも。と、おかあさんが悲しそうに続けた言葉は
「かわいそうに。大いなる運命を背負わなければいけないなんて」
そう言ったおかあさんの肩に手を載せたおとうさんは、まるで自分に言い聞かせているかのように言った。
「心配するな。私たちの娘なんだぞ、大丈夫に決まっている」
「…そうね」
おかあさんんは私から体を離して、微笑みながら言った。
「あなたはあなたの生きたいように生きなさい」
と。
そして、いつの間にか私たちから少し離れていたお父さんの隣に並び、私の背後を指差した。
「さあ、行け。お前なら何だってできる」
「自分の思うがままに生きるのよ」
二人が言い終わった瞬間。私はおかあさんが指差した方向にグイっと引っ張られた。
私は叫んだ。
「おとうさん!!おかあさん!!!」